2022年アルファポリス様の第10回BL小説大賞で『平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話』で奨励賞頂きました(ㆁωㆁ)⇒改題して2024年9月発売
「愛しい番の囲い方。」2023年9月発売
「宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている」2024年9月発売中〜🐣✨
ムーン⇒https://xmypage.syosetu.com/x4628bv/
アルファポリス⇒https://www.alphapolis.co.jp/author/detai
あり得ない状況に、俺は思わず頭を抱えた。
だけど妊娠しているのは事実。
だとすれば、種と仕込みがある話だ。
「問題は、誰に仕込まれたのかって話だよな……」
残念ながら、誰かと致した記憶はない。
「どこか不自然に記憶が飛んでる日があれば、その時が怪しいんだろうけど」
残念ながらカーザイル王国の第三王子の俺の行動は、護衛騎士や侍女たちによって記録されている。
例え酔っ払って俺自身が記憶を飛ばしていても、ばっちり記録に残っているのだ。
「でも侍女たちからも、何も報告されてないし」
八方塞がりの状況に、俺は絶望のため息を落とすのだった。
あり得ない状況に、俺は思わず頭を抱えた。
だけど妊娠しているのは事実。
だとすれば、種と仕込みがある話だ。
「問題は、誰に仕込まれたのかって話だよな……」
残念ながら、誰かと致した記憶はない。
「どこか不自然に記憶が飛んでる日があれば、その時が怪しいんだろうけど」
残念ながらカーザイル王国の第三王子の俺の行動は、護衛騎士や侍女たちによって記録されている。
例え酔っ払って俺自身が記憶を飛ばしていても、ばっちり記録に残っているのだ。
「でも侍女たちからも、何も報告されてないし」
八方塞がりの状況に、俺は絶望のため息を落とすのだった。
俺は授業終了を告げる鐘の音と同時に教室を飛び出し、屋上テラスへと移動していた。
風が冷たいこの季節、屋上に来るやつなど誰もおらず、しん……と静まり返っている。
備え付けのベンチに腰を下ろし、さっき習ったばかりの妊娠判定の魔法を自分に掛けてみる。
すると、間違いなく俺の腹は脈打つようにじわりと暖かくなっていた。
「妊娠?俺が?」
呆然と自分の腹を見下ろす。
「って、一体誰の子だよこれ……」
この学院の最終学年の俺には、卒業と同時に結婚する婚約者がいる。
が、俺はそいつに凄く嫌われていたから、そいつの子供の筈がない。そもそも俺は童貞処女なのだ。
俺は授業終了を告げる鐘の音と同時に教室を飛び出し、屋上テラスへと移動していた。
風が冷たいこの季節、屋上に来るやつなど誰もおらず、しん……と静まり返っている。
備え付けのベンチに腰を下ろし、さっき習ったばかりの妊娠判定の魔法を自分に掛けてみる。
すると、間違いなく俺の腹は脈打つようにじわりと暖かくなっていた。
「妊娠?俺が?」
呆然と自分の腹を見下ろす。
「って、一体誰の子だよこれ……」
この学院の最終学年の俺には、卒業と同時に結婚する婚約者がいる。
が、俺はそいつに凄く嫌われていたから、そいつの子供の筈がない。そもそも俺は童貞処女なのだ。
なのに、まさか身内から裏切られるとは……。
先に生まれた私を羨み、私の物を何でも欲しかったランシャ。
まさか運命の番である婚約者までも奪いにくるとは思わなかった。
それほど、獣人にとって番とは不可侵の領域だったのだ。
「ナギ、どうか僕を許して……」弱々しく言葉を紡ぐランシャ。そんな嘘つきな弟を、愛しげに抱き締めるアンジェ様。
「ナギ、俺達はどうせ政略的な婚約だったじゃないか。であれば、婚約を解消しても問題ないだろう」
その言葉は、私を絶望の縁に突き落とす。
私は、貴方を愛していたのに。貴方はそうではなかったのか……。
なのに、まさか身内から裏切られるとは……。
先に生まれた私を羨み、私の物を何でも欲しかったランシャ。
まさか運命の番である婚約者までも奪いにくるとは思わなかった。
それほど、獣人にとって番とは不可侵の領域だったのだ。
「ナギ、どうか僕を許して……」弱々しく言葉を紡ぐランシャ。そんな嘘つきな弟を、愛しげに抱き締めるアンジェ様。
「ナギ、俺達はどうせ政略的な婚約だったじゃないか。であれば、婚約を解消しても問題ないだろう」
その言葉は、私を絶望の縁に突き落とす。
私は、貴方を愛していたのに。貴方はそうではなかったのか……。
「ナギ、俺との婚約を解消してくれ。俺はランシャの番として、彼を幸せにしたい」
その言葉に、思わず私は大声を上げたくなった。
貴方は私の運命の番だ、と。
何故、長年婚約関係にあった私より、弟を愛しそうにみつめるのか、と。
でも、それらの言葉は私の口から紡がれる事はない。
『何事があっても、己の番に関して言及してはならない』
それが私に掛けられた枷だったのだ。
獣人の国の王太子である私の婚約者アンジェ様を組織に取り込めば、次期国王である私を意のままに操る事ができる。
「ナギ、俺との婚約を解消してくれ。俺はランシャの番として、彼を幸せにしたい」
その言葉に、思わず私は大声を上げたくなった。
貴方は私の運命の番だ、と。
何故、長年婚約関係にあった私より、弟を愛しそうにみつめるのか、と。
でも、それらの言葉は私の口から紡がれる事はない。
『何事があっても、己の番に関して言及してはならない』
それが私に掛けられた枷だったのだ。
獣人の国の王太子である私の婚約者アンジェ様を組織に取り込めば、次期国王である私を意のままに操る事ができる。
それをいいことに、ランシャはアンジェ様を騙したのだ。
私は自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をすると、声をひそめてアンジェ様に言った。
「なぜランシャの言葉を真実だと思ったのですか?」
「ランシャには嘘をつく必要がないからだ。それに全身で俺に愛を告げてくるランシャの姿に、嘘偽りがあるとは思えない」
キッパリと言い切るアンジェ様を、私は暗い瞳で見つめた。
「俺は人族だから運命を感じる事ができないが、ただ一途に好意を寄せてくるランシャが愛しくて堪らなくなったんだ」
それをいいことに、ランシャはアンジェ様を騙したのだ。
私は自分を落ち着かせるように大きく深呼吸をすると、声をひそめてアンジェ様に言った。
「なぜランシャの言葉を真実だと思ったのですか?」
「ランシャには嘘をつく必要がないからだ。それに全身で俺に愛を告げてくるランシャの姿に、嘘偽りがあるとは思えない」
キッパリと言い切るアンジェ様を、私は暗い瞳で見つめた。
「俺は人族だから運命を感じる事ができないが、ただ一途に好意を寄せてくるランシャが愛しくて堪らなくなったんだ」
「ナギの婚約者だから言わないでおこうと思ってたんだ。でも辛くて、苦しくて。このままだと僕、おかしくなってしまいそうで……。アンジェ様に本当の事を告げてしまったんだ。許してナギ」
「獣人にとって運命の番とは、命に等しく大事なものだと聞いている。これは仕方のないことだ」
アンジェ様がランシャの肩を抱き、愛しげに額にキスを落とすのを、私はただ黙って眺めるほかなかった。
苦しい。苦しい。苦しい。
アンジェ様は私の運命の番だ。なのにランシャは嘘をつき、私から彼を奪っていこうとしている。
「ナギの婚約者だから言わないでおこうと思ってたんだ。でも辛くて、苦しくて。このままだと僕、おかしくなってしまいそうで……。アンジェ様に本当の事を告げてしまったんだ。許してナギ」
「獣人にとって運命の番とは、命に等しく大事なものだと聞いている。これは仕方のないことだ」
アンジェ様がランシャの肩を抱き、愛しげに額にキスを落とすのを、私はただ黙って眺めるほかなかった。
苦しい。苦しい。苦しい。
アンジェ様は私の運命の番だ。なのにランシャは嘘をつき、私から彼を奪っていこうとしている。
「ノア、ごめん。もう、マジで好きなんだけど」
気付けば腕を伸ばしてノアを抱きしめている自分がいる。
そして、さっきまでどうしても口にする事が出来なかった謝罪の言葉も、するりと口から飛び出した。
やっぱ彼シャツ姿の番には、何も勝てやしねぇわ……。END
この後はきっと甘〜い夜へ突入……なるか?なるのか??さてさて🙄
www.alphapolis.co.jp/novel/648148...
「ノア、ごめん。もう、マジで好きなんだけど」
気付けば腕を伸ばしてノアを抱きしめている自分がいる。
そして、さっきまでどうしても口にする事が出来なかった謝罪の言葉も、するりと口から飛び出した。
やっぱ彼シャツ姿の番には、何も勝てやしねぇわ……。END
この後はきっと甘〜い夜へ突入……なるか?なるのか??さてさて🙄
www.alphapolis.co.jp/novel/648148...
「……え?」
驚いて目を見開いていると、ノアは耳を赤く染め、恥ずかしそうに視線を彷徨わせた。
「他のヤツの匂いが付くのは、臨時パーティ組んでクエスト受ける以上仕方ねぇだろ」
少しだけ唇を尖らせるノアが、可愛い。
「でも、狼が匂いに敏感はのは分かるし、番に余所の男の匂いが付いて面白くないのも分かるからさ……」
ふっと困ったように笑うと、俺の方へと一歩足を踏み出してきた。
「匂いの上書きっつーか……。これで我慢しろよな」
シャツの襟元を指で摘んで、ノアがパタパタと扇ぐようにはためかせる。
「……え?」
驚いて目を見開いていると、ノアは耳を赤く染め、恥ずかしそうに視線を彷徨わせた。
「他のヤツの匂いが付くのは、臨時パーティ組んでクエスト受ける以上仕方ねぇだろ」
少しだけ唇を尖らせるノアが、可愛い。
「でも、狼が匂いに敏感はのは分かるし、番に余所の男の匂いが付いて面白くないのも分かるからさ……」
ふっと困ったように笑うと、俺の方へと一歩足を踏み出してきた。
「匂いの上書きっつーか……。これで我慢しろよな」
シャツの襟元を指で摘んで、ノアがパタパタと扇ぐようにはためかせる。
珍しいな……と、天井に目を向けていると、足音は何かを迷うかの様に行ったり来たりを繰り返し、やがて何かを決心したのか、スタスタと階段の方へと進み始めた。
「まさか家、出ていくとか言わねぇよな……」
ふと思い付いた考えが口から零れ出る。
いや、まさかノアにかぎって……。
でも俺に嫌気がさして、本当に出 ていくつもりかも……っ!
慌てて俺がソファから立ち上がるのと、カチャリと音をたてて居間の扉が開くのは同時だった。
珍しいな……と、天井に目を向けていると、足音は何かを迷うかの様に行ったり来たりを繰り返し、やがて何かを決心したのか、スタスタと階段の方へと進み始めた。
「まさか家、出ていくとか言わねぇよな……」
ふと思い付いた考えが口から零れ出る。
いや、まさかノアにかぎって……。
でも俺に嫌気がさして、本当に出 ていくつもりかも……っ!
慌てて俺がソファから立ち上がるのと、カチャリと音をたてて居間の扉が開くのは同時だった。
「ノア」
「どんだけ俺成分が足りてねぇんだよ。俺喰っても腹は膨れねえぞ」
ヤツを振り仰ぎ、呆れ声を洩らすと、ヤツはギラつく目を細めてニヤリと笑った。
「ノアを喰えば、俺の心身は満たされんだよ」
その素直な台詞に、俺も白旗を上げる。コイツが居なくて、なんか物足りなく感じていたのは、俺も同じなんだ。
「仕方ないな。じゃ、ベッドに行くか」
俺の言葉に、ルーカスは顔を綻ばせた。
「俺の番は、やっぱり最高だな」
そういいながら近付く唇を、俺は大人しく受け入れたのだった。
「ノア」
「どんだけ俺成分が足りてねぇんだよ。俺喰っても腹は膨れねえぞ」
ヤツを振り仰ぎ、呆れ声を洩らすと、ヤツはギラつく目を細めてニヤリと笑った。
「ノアを喰えば、俺の心身は満たされんだよ」
その素直な台詞に、俺も白旗を上げる。コイツが居なくて、なんか物足りなく感じていたのは、俺も同じなんだ。
「仕方ないな。じゃ、ベッドに行くか」
俺の言葉に、ルーカスは顔を綻ばせた。
「俺の番は、やっぱり最高だな」
そういいながら近付く唇を、俺は大人しく受け入れたのだった。