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ジャンル雑多 / ↑20 / 色々なものが好き / よろずアカウント予定
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ずっとここに閉じ込めたい気持ち
September 30, 2025 at 2:47 PM
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二基実装されてるサーヴァントの中でノッブと沖田さんは普通に横に並んでるのに、景虎さんと謙信ちゃんは晴信さんを包囲してるみたいな位置なの、ジワる
September 19, 2025 at 3:49 AM
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めちゃくちゃ久しぶりにアンリマユ来てくれた〜！ようやく宝具5！
August 11, 2025 at 3:57 AM
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大人気じゃーん
August 7, 2025 at 1:32 PM
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ここにも置いときますね
7/13のサクカの巌ぐ♀
June 8, 2025 at 10:38 AM
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Xで突発的に書いたやつ
季節ネタ梅酒を仕込む巌ぐ♀
June 8, 2025 at 10:29 AM
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巌ぐ♀
オレさんと俺さん
May 20, 2025 at 3:21 PM
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アイネクライネの希求（11/11）
「分かった、分かった。おまえの感謝を受け取ろう。せいぜい着倒すといいさ。……だが、それは務めを十全に果たせなかった俺の瑕疵ゆえだ。全く、己の左肩を抉りたくなる」 「責めてるわけないでしょ！　左肩はもう何ともないよ、キミが治してくれたんだから！　ほら、こうしてぴんぴんしてるし。何なら見る？　まっさらなものですよ」 　やはりまだ心配性が過ぎる！　と、襟に手をかけて見せる。しかし明るい悪ふざけは細く引き絞られた赤い瞳によって窘められる。「冗談だってば」と唇を尖らせた助手席へ「……冗談が下手だな」と嘆息が飛んだ。 　以前のような軽やかなキャッチボールが出来る喜びに立香は頬を持ち上げる。再会して三十分にも満たない時間であったが、ようやく元の位置に辿り着いた様な感覚だった。じわじわと込み上げる歓喜を実感した。もっと話をしたくとも、もう裏門は目の前だった。ゆったりと停車した後、ハザードが焚かれてかちかちと鳴る。 　男はそれが当たり前のような、慣れた動作でまた助手席のドアを開ける。様になるなぁと思いながら立香はありがとうと声を投げた。男はやはりこの程度と何ともと言いたげな顔だったが、しっかりと「ああ」と返されたので満足気に二つほど頷いた。男の腕と脚の代役を果たした車体から身を下ろす。途端に生まれるいつもの身長差。頭まるまる一つ分は優に高い位置から注がれる視線を旋毛に感じ取り、立香はちらりと見上げるが、いつものすました顔だった。 「行ってくるといい。おまえの征く先にこそ、輝けるものがあるだろうさ」 「……キミが言うと『いってらっしゃい』すらかっこよく聴こえるね」 　名残惜しさですぐには「いってきます」が言えない。立香の足は根が張ったかのように動かない。動きたくない。しかしいつまでも車の傍で棒立ちしている訳にもいかなかった。道端に止めた黒塗りのセダンを避け、一台の車が横を行った後のこと。 「……。帰りも、来れたりする……？」 　その小さな小さな囁き声は、男の鼓膜に深く響いた。 「えっと、そう！　冷蔵庫の中ほとんど無くてさ！　スーパーに行きたいと思ってたんだ！　車があれば二箇所くらい回れるかも。……ってこれじゃ我儘すぎるな……」 　理由を探しては、躊躇うように伏せられた瞼を前に、男は音なく息を吐き、吸う。静かに溺れ泳ぐように。 「……いいや、いい。おまえが望む所二つでも三つでも車を回そう。迎えは同じくここで良いか」 「！　うん！　約束ね！」 　パッと顔を上げて晴れやかに笑う。庇の無い瞳は輝く。こくこくと頷く。男はゆるりと目を撓ませた。結んだ待ち合わせに心を踊らせた立香は、ようやく足の根を剥がすことができた。 「じゃあ行ってくる！　また後でね！」 「ああ」 　小さな手は細かく振られ、大きな掌が応えるように挙げられた。 　立香はくるりと振り返って、歩き出す。部活動終了のチャイムの鐘が鳴る。走り出した。 　嬉しかった。再び結べた約束が。帰りにはまた会って話せるという数時間後の未来を思い描けることが。鼻歌でも歌えそうな気分になって、ふと空を見上げた。冬の高くて雲の遠い空だ。上を向いたまま「あ」と立香は、また一つ気付いた。 　男は裏門から駆けていく後ろ姿を、具に見つめていた。眩いものを見るように目を細めていた。その一切が見えなくなるまで視界に収めていようとしていた。が、その背がくるりと振り返る。見えなくなるどころか、その姿はこちらに戻って来ていた。 「どうした。忙しないな」 　蜻蛉返りした立香に、男は片眉を上げ何事かと問うと、こう返ってきた。 「忘れ物！」 「何だと？」 　男は素早く助手席を覗き込む。ドアを閉める前に確認したはずだった。念の為もう一度確認しようとドアノブを掴む。開ける直前、白くて大きな手を、立香の手が掴んだ。 「ちがくって！」 　きゅ、と掌に乗せられた手が白い手を握る。細い手指のやわらかな拘束に、男は微動だにしない。 「キミに言うのを忘れてたの！」 「……何をだ」 　輝ける瞳はひたと見つめて、男の目を奪う。 「……おかえり（・・・・）！」 「…………は」 　息すら奪われた。 　返す言葉を希う瞳から、期待の光を見てとる。その奥からは切望のさざめきすら見いだせた。男は喉を震わせようとして。だがしかし、だからこそ、喉は貼り付いたようにそれを音にできない。 「……おまえは、それ（・・）を、オレに許すのか」 「許可が要るの？　変な話だね……わたしはキミを待って たから、『おかえり』って言いたかったの。キミは帰ってきてくれたんだから、この返事が聞きたいなと思って」 　今日で十日目。それだけ一緒に居たのに、言うのが初めてなのは、離れることなくずっと一緒に居たからかな、と立香は頬をかく。寸暇なく襲う艱難を薙ぎ払う影であった日々も、黄金の海を共に見た後の日々も、魔術師でもなんでもない少女は確かに、孤独とは全くの無縁だったのだ。 「…………」 　喉から何も吐き出せない男を前に、立香は「あれ、もしかしてフランスにはこの挨拶ってない……？」と小首を傾げ、そして瞳は一抹の不安に翳る。それを見た男は喉奥で唸る。一体何を理由に、この輝きを曇らせられようか、と胸の奥で燃える何かが叫んだ。 　例え、帰る場所諸共、疾うに捨て去ったのが、復讐鬼というモノの在り方だとしても。 　例え、その言葉を向けるべき、本来の相手を識っているとしても。 「……フランス語には、これそのものを表す言葉はない。そも、おまえが投げかけたのは日本語だろう。ならば返す言葉はこれしかない。……、――――」 　律儀に疑問へ回答した後。男は吐き出す。その四文字の音は小さかった。掠れていた。 　耳をそばだてていた立香は顔を綻ばせた。その言葉は求めたものと相違ない。 「思ってたよりウィスパー……！　あはは！　でも、うん、うん。やっぱりいいね」 　――帰ってきてくれたんだなぁ、と実感するよ。 　そう呟き、噛みしめるように一度瞼を伏せる。その時、ホームルームの予鈴が鳴った。 「え！　わ！　せっかく送って貰ったのに遅刻しちゃう！」 「ならば走れ。……――立香。また放課後に」 「うん！」 　男は駆ける背をいつまでも見つめていた。正門側に向かい、跳ねる髪のひと房すら見えなくなっても、ただひたすらに見つめていた。 　鐘の音は伸びやかに、青い空へ高く遠く、吸い込まれていった。 「共に、とおまえが言ったのだ。そうだ。そうだったな。ならば既に燃え尽きた灰であれ、だ」 　手で顔を覆い男はわらう。その声が聞こえるものは誰一人としていない。 「――我が身が存在する意味など、おまえ以外にあるものか」
May 16, 2025 at 10:24 AM
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アイネクライネの希求（8/11）
　カーテンを開け、シャッターを上げる。冬の朝の空気の冷たさに一度身震いして、電気ストーブを付けた。顔を洗って、食パンを切り出して、トーストを焼く。夢に見たからとはいえ物思いに耽りすぎた。いつも早めに目覚ましを設定しているが、もうあまり時間が無かった。 　トースターが鳴るまでの間にフライパンへ油を引き、火にかける。温まるまでの間、薬缶で沸かし湯呑みで少し冷ました湯をちびちびと飲みながら、お昼は購買にしようとぼんやり思う。フライパンにハムを敷き卵を割って入れる。テレビは朝の天気予報に移り変った。 　簡単な朝食を用意しながら身支度をする。 　制服に着替えてネクタイを締める前に、トーストを取り出す。ハムエッグをその上に乗せた。コーンスープの元はもう無くなっていたので、インスタントの味噌汁と共にリビングテーブルに並べた。いただきますと手を合わせてから、テレビを傍目に無理やり和洋折衷と言えなくもない、ありものの朝食を口にする。 　巌窟王は受肉をしてから二日後に、ここを出て行ったきりだった。 『必要なものを揃えてくるだけだ。暫し待つがいい。そうだな、……五日。五日後には必ず戻るとも』 　そう言って、そっと頭を撫ぜていった。 　聖杯戦争のさなか、迅速な移動が必要になった時は、振り落とさないように抱えられていた。命を預けるに値するその腕の力強さをずっと頼もしいと思っていたが、その時、大きな白い手が存外やわらかい触れ方をするのだと知って、立香は目を丸めた。 　その日から今日が五日目だった。戦いを共にした七日と受肉してからの二日の合わせて九日間と比べて、短いはずの五日間の方が間延びして長く感じた。そしてどうにも薄味のような気がするな、と考えて、立香はかぶりを振った。 　あのような生き死にを巡る非日常が濃すぎたのだ。それよりも日常に帰れたことをきっと尊ぶべきだ。そう思案して、一人分の食器を洗った。 　巌窟王はきっと今日の夜までには帰ってくるだろう。そう考えて髪をシュシュで結って身支度を終える。火の元と電気、戸締りを確認して、さて登校しようと玄関に向かった、その時だった。 　ローファーを履こうとする。すると鍵がカチャリと鳴る。そして、ひとりでにからからと扉が開いた。 　立香の目には全てがスローモーションのように見えた。 　玄関扉を少しくぐるような仕草で、その男は入り込んだ。 「出るところだったか、丁度良い」 「…………がっ、巌窟王！？」 　呼ばれた男は引き戸の扉を背に立っていた。ダークグレーのスーツ姿は初めて見るものだった。綾織の紋様が細やかな生地だ。日本人よりも遥かに長い手足が余ることのない形に仕上げられている。仕立てなど何もわからない立香が見ても、良いものだろうことが伺えた。 「え……え！？」 　口を開いたまま、すぐに言葉を続けられぬ様子を横に男は上がり框に置かれた立香のリュックを背負う。 「もう学校へ向かわねばならぬ時分だろう。送っていく」 「送るって……」 　また男によって開けられた引き戸の奥、家の目の前に停められた黒塗りのセダンが見えた。 　立香は巌窟王という男の黄金律の認識を一つ更新した。五日の期間でここまでの物の用意立てが出来るのだ。受肉してからは、ほぼその身ひとつだったと言えるだろうに。 　どう見ても高級車の外装だ。覗き込むと意外にも右ハンドルだった。助手席側の扉を開けられ、恐る恐る腰を据えた。皮のシートの座り心地の良さを何とか受け止めながら、立香は隣でハンドルを持つ男の規格外さを改めて思い知った。 「変わりないようだな」 「……学校に行って、帰って、いつも通りだよ」 　そうか、と平坦でなだらかな声音がひとつ返ってきた。 　ともかく立香は一旦冷静になるため、一緒に登校している友人たちにメッセージを送っていた。『待たずに行ってて！』と手早く打って送信ボタンを押す。押してすぐ、隣の男を見やる。 　変わらずの白皙の美貌で、どこか現実離れしている。立香が初めて見る運転しているその姿を上から下、また下から上とまじまじと眺めていると、前を向いたままの男が「穿つような眼色だな」と口角を僅かに持ち上げた。 「本当に……キミがいるんだな～と思って」 「ハッ、まさか幻などと言ってくれるのか？」 「『必ず』なんて言ってくれたから、待ってましたとも」 『必ず戻る』など、立香は男の口から初めて聞いた。 （――わたしが引き出してしまったのだろうか。あの頭に柔く乗せられた手といい、わたしはあの時、一体どんな顔を、していたんだろう――。） 　コツ、と小気味よくシフトレバーが鳴る。車体は滑らかに減速して止まった。停止したことに漸く気付き、ハッと前を向くと赤信号で止まっただけであった。レバーに手を置いたまま、男は立香に静かに視線を注いでいた。やはり、何処までも見透すような視線だった。 「……わたしは変わりなかったけど、キミは？　何してたの？　こんな車までどうやって用意したの？」 　立香は笑って問う。その綺麗なカテナリーに整えられた口元を視界に入れ、男は眇めた。しかし青信号に変わったことでゆったりとアクセルを踏み込む。緩やかな加速と共に五日間のことを語り始めた。 「え。もう仕事してるの！？」 「職が無ければ、この国の就業ビザは手に入らんからな。この車はその関係で手にしたものだ。まあこの程度でも足にはなる」 「……、そーですか。……就業ビザとか、そこは意外と真っ当に手続きしてるんだね」 「意外とはなんだ」 「いやいや、さっきの戸籍の辺りとかサックリ流したけど、どうゲットしたのかな～と。うん、聞きたいけど聞きたくない……」 「おまえに問われれば答えようとも」 「いいよぉ、真っ黒じゃない事だけは分かったから十分」 　立香は一度ふうと大きく息を吐く。スーツや車程度で驚いていては何もかもが足らない話だった。隣の男は、この世界での第二の生を過ごすにあたって必要なもの全てを取り揃えていた。この巌窟王という男が規格外であることを再度、頭に刻み付けて置く。巌窟王はおよそ手に入れられぬ物のない規格外の階層（エクストラクラス）の男だと。 「……ここまでの話を聞くと何でも出来そうなのに、日本国籍は取れなかったんだ？」 「……何、それは追追とだ」 　立香はふーん？　と隣を見やる。男は平静そのものの表情だった。こうして横顔を見ていると、この角度と位置取りがあの夜明けの時と近いと気づいた。 「あ、そうそう、今朝キミの夢を見たよ」 「…………ほう？　俺がか。ポベートールの獣の夢でなければ良いが」 「獣？　そんなもの出てこなかったよ。キミと聖杯を使った時の夢だった」 　立香はそっと瞼を伏せた。今でもあの輝きが、あの表情が焼き付いているような気がした。 「すごかったなぁ。本当の事なのに、すっごく幻想的で、こう、なんというか……」 「――夢のようであったと？」 　上手く言葉にできない立香へ、男が言葉を投げる。ほんの僅か、ぴんと張った空気を感じ立香は瞼を上げた。赤信号になっていて、男はこちらを見やっていた。 「……それこそまさか。わたしはあの日々が夢だなんて思 えないし、思ってはいけないでしょ」 　聖杯へかけがえのない願いを掛ける人がいた。目を覆いたくなるような悪を成す人もいた。彼らと彼らの願いを踏みにじる。ただ死にたくなくて、生きたかったからという理由でその行いを許容した。その事を藤丸立香は決して無かったことにはしない。できない。決して、一時の夢のようだったとは語れなかった。 「……、そうだな」 　一言だけ返し、一度口端を持ち上げた男はすいと前に向き直る。その時ちょうど信号が青に変わる。二人を乗せた車体は緩やかに進み出した。 　するすると見慣れた通学路を走る。その途中の信号待ちで左折ウィンカー。立香が先に指定していたように裏門側へ向かっている道順だった。こんな車で、こんな男性に送迎されていたとクラスメイトに知れたら、追求は免れないと簡単に想像できたからだ。普通の高等学校の代わり映えのない登校風景に、この車は一大イベントにしかならない。 　登校、と考えて立香は「あっ」と小さく声を上げた。 「そうだ。ちゃんとお礼言えてなかった。この制服用意してくれてありがとう」 　立香はダッフルコートの上から左肩に手を当てる。その仕草を見た男は感謝を述べられたにしては苦いものを表情に滲ませたが、するりと眉根を解き、元のすました顔に戻った。 「乙女が冥府に身を置く季節にジャケットも羽織らずにいるなど、如何に風の子などと謳われようと無謀だろうからな」 「ん～？　また難しいこと言われたけど、子ども扱いされてます？　でも破けた制服の代わりを用意してくれたのは本当に助かったよ。きっとわたしじゃ繕うのも無理だったし」 　流石にビリビリに裂けた制服では登校出来ないし、かと言ってブレザー無しは堪える季節だ。と、立香はウールコートを撫でる。その下から新品のブレザージャケットの襟が見えていた。五日前に巌窟王が家を出る前に何処からか調達し、置いていったものだった。春なら兎も角、冬にサイズぴったりの制服を誂えることが、一般人には容易では無いことは立香にも分かっていた。助けられたのだから御礼は言うべきだ。感謝を述べたからと言って、どういたしましてと返されるのが当たり前とは思っていない。これは自己満足のものだ。 　だが、さらりと流された理由と思われるものが、ほんのり気に食わなかったとも言う。 「だから、ありがと！　ね！　大事にするね！」
May 16, 2025 at 10:23 AM
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アイネクライネの希求（4/11）
https://privatter.me/page/6826b4f6e82cf
印刷された本の本文の体裁で画像化されたテキストです。付記に「01／アイネクライネの希求」、「彼方の夢」と記載されています。 以下は本文の内容です。 　それは、星々からなる海のように見えた。 　夜明け前の一際暗い空の下、数多の極小の光の粒たちが広く眼下に揺蕩う。 　数分前までの乱戦、決戦から一転して夢のように静かだ。 　立香は、瞬く間にあたり一面に広がったその黄金の海に息を飲んだ。果てのない眩さだった。始めこそ、その光景に圧倒されるばかりであったが、持ち前の好奇心が勝り、腰のあたりの高さにある水面に手を入れてみる。これもエーテルや魔力と呼ばれるものなのか、水のような感触は無い。熱も感じない。眩いばかりの光の波に見えた。 「これが聖杯……？」 「そうとも。万能の願望器、という名は些か荷が勝つだろうがな」 　答えた男は、紫煙を燻らせている。外套を風にはためかせ、最後に深く煙を吸い込むと、口腔に滲んだ血と共に呑み込んだ。一気に短くなった葉巻を端へ放ると、黒炎で塵も残さず燃やす。 「多少なりとも汚染されているのではなかろうかと思っていたが、如何にも純粋な魔力リソース、か」 　そう呟いたきり、黄金の海を注視したまま言葉を切る。 「もっとこう、器のようなものをイメージしてたな」 「これの形に意味は無い。そう想起すればそのように姿を変えるだろうよ」 　そう語る男の言葉を聞き、立香は椀のように合わせた両手でそっと海の一部を掬いとった。 　〝聖杯〟という単語を目の前の男に教えて貰った日の夜に、スマートフォンで調べていた。その時の見た画像をぼんやりと思い出そうとする。するとみるみるうちに手の中の星くずが黄金の杯へと姿を変えた。精巧な細工が施された盃は、まだ辺りに無数とある光を受け、弾き、なめらかにつやを放つ。 「わ、すごい……！　え、これがわたしのイメージからできたものなの？　わたしの想像力もなかなかのものでは？」 　かつての世界で、おまえは幾度となく手にしていたものだからな。と男は思案するも、その眼を緩く撓ませるに留めた。 　立香はまじまじと杯を見つめていたが、ついと視線を移した。 「もう一度、聞いておくね。アヴェンジャー、キミの叶えたい願いは本当に無いの？」 「ああ。我が身に願いなど無い。それはおまえが勝ち得た報酬だとも。マスター」 「……そっか」 　暫く二人の間に言葉は無かった。空白の時間は不思議と 居心地の悪いものとはならない。立香は辺りの光の海原を眺める。男は葉巻も咥えず、その姿を見つめていた。 　冬の高く澄んだ空の下にあって、聖杯によるものか波間は不思議と寒さがない。急展開によって高校の制服そのまま決戦に臨むこととなったため、立香はコートも羽織っていなかった。 　ブレザーの左の肩口には大きく破れができ、血の滲むシャツが覗いていた。最終戦に於いてマスター自身も共に前線を張った。そう言って聞かなかった。そのさなかに降った数多の弾幕の一つによるものだ。他にも頬や膝などに血糊が幾つもあるが、今は男の宝具でその下は全てなめらかな肌に戻っている。 　それら全てを視認して、男は細く息を吐く。 　刻限だった。マスターの勝利のために文字通り全身全霊を尽くしたサーヴァントの魔力は既に底をついている。退去するまでの時間を逆算すれば、もう、問わねばならなかった。 「さぁマスター。おまえはこの聖杯に何を願う！」 　高く哄笑する。 　男に叶えたい願いなど、既に無い。その言葉に嘘は無い。なぜならば、強いて願いと呼べるモノは、もう既に叶えられているのだから。 　汚染なき聖杯で、どうして反英霊が呼ばれ得るのか？触媒も無しに、有り得ざるこの霊基が呼ばれ得るのか？それは魂に刻まれた縁の為せるわざに他ならない。 　――おまえとまた相見えたなど、ましてや声を交わし隣に立ち、また導くことが出来たなど。そして、胸のすくような勝利などと。随分と出来すぎた夢だ。過剰なサービスにも程があろう。しかしこれは夢幻では無く、この世界の現実として地に根を下ろしている。そう、どの世界であろうと、例え記憶を持ち越しておらずとも。おまえは、おまえという気前のいい女（・・・・・・）に変わりは無かった――。 　帽子の鍔を下げ目を細めた。男は何一つとして、その裡の想いを言葉にしなかった。 　問われた立香は聖杯を両手に抱え持ち、真っ直ぐ男を見据えた。 「わたしが好きに使っちゃうよ？」 「願うがいい。おまえは全てが許されている」 「……分かった」 　左手に持ち替えた聖杯をそっと持ち上げる。 「七日間。いやそれはもう濃い日々だったけど、キミと話せたのは、まだ、たったの七日間だけ」 　立香は息を吸って、吐く。掌にも甲にも、もはや何も無い空の右手を、男に差し出した。 「――だから、キミともっと一緒にいたいな。巌窟王」 　男は目を瞠った。 　少女は微笑む。 「……、……。我が身は怨念と復讐で形作られた、亡霊が如きモノ故に、おまえと並び立てたというに。燃え尽きようと、熱など疾うに感じようも無い身なれど、生きた血肉は些か……些か過ぎた熱だろうよ」 「……難しく言って煙に巻こうとしてる？　わたしは真剣だよ」 「……この身は呪いによって現世に落とされた影なれば。なればこそ、おまえの炎として在れるモノだ」 「えっと、つまり……どういうこと？」 「この聖杯で受肉をすれば、サーヴァントのその身は凡そ只人に成り下がる、と言っている」 「……そうなったらわたしの力になれない、と思ってるの？」 　立香はパチパチと目を瞬かせた後、ふっと吹き出した。張り詰めていた空気が割れるように霧散する。 「バカだなぁ、そんなこといいのに。キミならいいんだよ。力が欲しいんじゃなくて、キミがいいんだよ」 「…………」 　男は長い沈黙の後、一つだけ問う。 「――それが、おまえが真に願うものなのか」 　男の瞳が見透すように、射通すように視線を投げる。その視線でまたピリリと空気が引き締まるのを立香は正しく感じ取った。それを受け止め、一度目を伏せ、開く。その深紅の瞳を真っ直ぐ見つめ返した。 「……言っちゃうと、出逢いは屋上から落っこちてる時なんてものだったけど、その時から、こう……ビビビってくるものがあったから」 「ほお？　初耳だな」 「恥ずかしいでしょ……そんな、……」 　その頬は仄かに染まっていた。 「――そんな……運命、みたいなこと言うの……」 　男は目を、見開いた。 「…………敵わんな。いいや、おまえに敵うべくもあるまいか」 　オレも俺も、私も。そう口元で密かに囁くと、深く被っていた帽子を片手で脱帽する。魔力で編まれているそれは空に煙のように消えた。 　よく見えるようになった男の顔が、常に見られる口元だけを歪めたものではなく、目元も含め深く笑っているのを認めて、立香も破顔した。 「もしも、キミが私の願いに付き合ってくれるなら――」 　もう令呪を三画全て使い切り、今はまっさらな右手を再度差し出す。 「――なら！　わたしの手を取って！　巌窟王！」 ◇ 　スマホのアラームが鳴る前に目が覚めた。六時十五分を指し示す時計を見て、また布団を被った。が、結局眠れる気がしなくて、あくびと共に伸びをした。 　冬の朝はまだ薄暗い。布団から出ると身体が冬の空気に迎えられる。手のひらを握って、開いて、くるりと返した甲には薄く残っていた痣のような名残もない。 　あの最後の夜から、もう七日が経つ。いや、まだたったの七日だった。立香はあの日々を断片的に、しかし鮮明に夢に見ていた。 　マスターの願いに付き合うと、差し出された手を握った巌窟王は空いた右手で聖杯も受け取った。それからの光景は今も瞼の裏に思い描ける。立香は手のひらで空気を包むように握りこんだ。 　あの海の中、どうやって受肉というものを行うのか、ただ見守っていた。 　巌窟王はグラスの中の葡萄酒を回すように聖杯を持つ手首を動かした。すると空であったはずの杯にはなみなみと水で満たされていく。認識で聖杯の姿が変わると言うなら、この変化もそうなのだろう。水に変換されたからか、辺り一面にあった光の波はいつの間にか消えていた。 　聖杯と同じように眩いまでの光をたたえている水を見つめていた男は、一度目を伏せる。 　そして再び目を開けると、そのままゆっくりと、杯を口元へ運び、一息に呷った。 　時が止まったかのように静けさの中、嚥下する度に動く喉仏を、立香はただ息を飲み見つめていた。そうして男は盃のすべてを飲み干した。 　その時、夜が明けた。 　彼方の空に朝日が滲む。陽の光が二人の立つ丘を、世界の縁を撫でるように照らしていく。杯はすべて光の粒となって、溶けて消えた。 「――嗚呼。酷く、甘美なものだ。おまえの願いは」 　陽に照らされた男の微笑が、どうしてか泣きそうな程に柔らかく歪み、同時に恐ろしいほどに整った美しいものだったことを、立香は今も鮮やかに覚えている。そして何度となく、反芻していた。
May 16, 2025 at 10:23 AM
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May 12, 2025 at 3:08 PM
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イド背景だったから記念撮影したやつ
January 1, 2025 at 10:51 AM
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レイドでの絆上げ
January 1, 2025 at 10:51 AM
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石がつきました……いつもその頃に来る方だな……
December 1, 2024 at 10:31 AM
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巌ぐだ♀原稿から一コマ
November 9, 2024 at 2:42 PM
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ぎりぎりで耐久してるのが面白くてスクショした（ランチボックス抱えて周回してた巌さん）
November 8, 2024 at 3:28 AM
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巌ぐだ♀ ※パロディ
October 18, 2024 at 10:44 AM
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巌ぐだ♀
October 18, 2024 at 10:42 AM
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投稿テスト〜
February 7, 2024 at 1:31 PM