星 暁雄 (Akio Hoshi)
akiohoshi.bsky.social
星 暁雄 (Akio Hoshi)
@akiohoshi.bsky.social
Tech Journalist
Interested in Tech and Human Rights, AI Ethics, Blockchain, Digital Democracy
米国のテック界隈は、民主主義で運営されるアメリカ合衆国政府を「訳も分からない連中がテックを規制する」と敵視し、トランプ支持に走った。

対話に応じない(ように見えた)バイデン政権にも問題はあったのだろう。しかし、「テックか、エスタブリッシュメントか」の2項対立だけでは間違える。「両方とも間違っているのではないか」という選択肢を考えるべきだ。

必要なのは第3の道だ。「テック業界の利害かエスタブリッシュメントの利害か」ではなく、(功利主義的に言えば)人々の苦痛を最小化し、人々のメリットを最大化する方法を考える——つまり人権のアイデアに基づき考える必要がある。

だが、その理解はなかなか進まない。
November 12, 2025 at 3:57 AM
一点訂正。

「ハードルが高くなる」と書いたのは、正確ではなかったかもしれません。

すでにパスポートと健康保険証は本人確認に使えなくなっており、eKYCには免許証かマイナンバーカードか在留カードがほぼ必須だったことには変わりない。だとすれば、「手続きが、券面撮影からICチップ読み取りに変わった」というだけの話です。

とはいえ、なんらかの新たな摩擦は発生するかもしれません。
November 11, 2025 at 11:00 AM
オンライン本人確認(eKYC)のルール厳格化は、オレオレ詐欺など反社会的な活動に携帯電話を使われるリスクを減らすかもしれない。

その一方、新規加入者のハードルは高くなる。マイナンバーカードも免許証も在留カードも持っていない人は、オンライン本人確認は利用不可となる。対面か書類郵送で本人確認をする必要が出てくる。

以下はIIJの説明ページ。法改正に基づく措置なので、他の携帯電話事業者も原則は同じ。
www.iij.ad.jp/news/pressre...
IIJ、個人向けMVNOサービス「IIJmio」の本人確認手続きを変更し、公的個人認証サービスならびにICチップ読み取り+容貌画像方式に対応 | IIJ
「IIJ、個人向けMVNOサービス「IIJmio」の本人確認手続きを変更し、公的個人認証サービスならびにICチップ読み取り+容貌画像方式に対応」を掲載しています。
www.iij.ad.jp
November 11, 2025 at 7:32 AM
Reposted by 星 暁雄 (Akio Hoshi)
ちょっと補足。

全世界で共通の人権状況の達成——これは遠い目標です。

そこで、中期の具体的な目標として合意されたものがSDGs(持続可能な開発目標)です。絶対的貧困の根絶(SDGs 1-1)、相対的貧困の半減(SDGs 1-2)など、2015年から2030年までの間に達成すべき169の目標を17グループに整理したものです。

SDGsは個人向けというより、各国政府の政策や大手企業の施策のような「大きなお金の使い方」を、もっと人権目標に振り向けていきましょう、という合意です。

ただし、テック富豪マーク・アンドリーセンやトランプ大統領は、SDGsの考え方そのものを嫌っています。
November 11, 2025 at 5:50 AM
人権目標の達成では、差別の撤廃の法制化、差別解消への是正策(アファーマティブアクションなど)も大事ですが、社会権に関わる「富の再配分」の側面も大きいものがあります。社会保障や労働環境は人権の不可分、不可侵な一部と定義されています。

ただ、アメリカ合衆国の企業人、投資家らの中には、人の平等や富の再配分を推進する政策を毛嫌いする人が目立ちます。

この世界が抱えている矛盾のかなり多くの部分は、資本主義の理屈と人権のアイデアとが、ひじょうに根源的な部分で衝突していることにある——と考えています。
November 11, 2025 at 5:54 AM
ちょっと補足。

全世界で共通の人権状況の達成——これは遠い目標です。

そこで、中期の具体的な目標として合意されたものがSDGs(持続可能な開発目標)です。絶対的貧困の根絶(SDGs 1-1)、相対的貧困の半減(SDGs 1-2)など、2015年から2030年までの間に達成すべき169の目標を17グループに整理したものです。

SDGsは個人向けというより、各国政府の政策や大手企業の施策のような「大きなお金の使い方」を、もっと人権目標に振り向けていきましょう、という合意です。

ただし、テック富豪マーク・アンドリーセンやトランプ大統領は、SDGsの考え方そのものを嫌っています。
November 11, 2025 at 5:50 AM
"イスラエルは過去に同会議をボイコットしており、ニカラグアは今年度から協力を停止している。"

感想:
米国が多国間主義に背を向ける様子は徐々に強まっている。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、お説教される材料が山盛りだ。それが分かっているので説教部屋行きをボイコットした。プライドが高いのは分かったが、それなら自ら範を垂れてはどうか。

中国やキューバはアメリカに物申したが、ヨーロッパ諸国は多くを語らない(もちろん日本もだが)。この構図、いつまで続くのか。
November 10, 2025 at 11:10 AM
"トランプ氏に反対する米当局者数名はジュネーブの国連に赴き、他国やNGOと「人権危機」と称する問題について協議した。
「トランプ氏は、自らによる絶え間ない人権侵害の成績表を望んでいない」とフィラデルフィア市地方検事ラリー・クラスナー氏は記者団に語った。「米国大統領が職務を果たしていないため、我々は出席した」と述べた。"

"トランプ氏は2月、初任期時と同様にジュネーブ人権理事会との関与を停止した。しかしワシントンは2020年の普遍的定期審査(UPR)には参加し、報告書を提出。当時の政府は「人権分野におけるリーダーシップは模範を示すことで実現されるという原則にコミットしている」と表明していた。"
November 10, 2025 at 11:04 AM
ロイター英語版の記事の方が詳細なので、こちらもリンクを残しておきます。

US snubs UN meeting on its human rights record
www.reuters.com/world/us-snu...

"米国政府報道官は、理事会が過去に人権侵害者を保護してきたと指摘し、国際機関への参加は米国の利益と価値観の推進に焦点を当てていると述べた。"

"会議に出席したキューバ代表は米国の欠席を「無責任な行為」と非難し、中国は米国の決定を「敬意の欠如を示すもの」と評し遺憾の意を表明した。"

"アムネスティ・インターナショナルは、米国の欠席を「責任の放棄」と表現した。"
www.reuters.com
November 10, 2025 at 11:02 AM
"国連の文書によると、トランプ政権下で移民の強制送還やLGBTQ(性的少数者)の権利後退、長年問題とされている死刑制度のような政策が審査対象となっていた。 加盟国全ての政府は自国の人権状況に関する報告書を提出することになっているが、米国は提出しなかった。"

"米国務省の報道官は米国の人権状況に誇りを持っているとし「国連の創設メンバーで個人の自由の擁護者である米国がベネズエラ、中国、スーダンのような国連人権理事会 (HRC) のメンバーから説教される筋合いはない」と述べた。"
(続く
November 10, 2025 at 10:59 AM
世界中で共通の基準の人権状況を達成することは、遠い目標です。いますぐ達成できないことは自明。

すぐには達成できない目標をどう考えるか?

アマルティア・センは不完全義務という概念を用いて説明します。私たちは今すぐ完璧な人権状況を達成することはできないかもしれない。しかし、少しずつ自分にできることをし続けることはできる。

例えば各種の差別について学び、差別を減らすことはできる。労働条件の改善のためストライキに参加することもできる。ジェノサイドに抗議するデモに参加することもできる。

自分にできることを、自分にできる範囲で積み重ねることが、人権という合意への参加の方法だと思っています。
November 10, 2025 at 7:51 AM
人権の歴史的意味はまずナチスの犯罪を繰り返さないこと。現実の歴史ではジェノサイドが繰り返されましたが、それらの犯罪は裁かれ処罰されるべきです。ICCがイスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相への逮捕状を出したのは(実効性は限定的だとしても)事実を歴史に刻むためです。

そして人権の意味はジェノサイドを防ぐだけではありません。人権とはすべての人の尊厳と権利が守られる社会を目指す合意です。

差別の撤廃、民主主義への参加、法の下の平等、移動・思想信条・集会・表現の自由、社会権(労働条件や社会保障など)などを全世界で同じ基準で達成することが人権のゴールです。遠い目標ですが目指す価値がある。
November 10, 2025 at 7:43 AM
国際社会が、異なる宗教、異なる思想、異なる文化を認め、そのうえで世界でひとつの人権に合意すること——それが世界人権宣言の歴史的な役割でした。人権とは普遍的なものであり、多元的なものであり、もはや論争の対象とするべきではないものなのです。

ただし、日本に住む多数派の人々は、このような認識を持っていないと思います。価値相対化の言説が大量に流布する中、数ある価値観のひとつが人権で、それを重視しない自由もあるよね、といったフワフワな認識の人がけっこう多いのではないでしょうか。
November 10, 2025 at 7:34 AM
世界人権宣言の起草で重視されたものは普遍性です。地球上のどこでも、誰でも、同じ基準に合意できる人権を明文化しようとしました。

哲学者は異論を唱えることが職業です。いっぽう、世界人権宣言は「思想的、宗教的な論争を放棄」することで条文への国際合意を果たしました。当時の国際社会が求めていたものは終わりなき論争ではなく、ナチス再来を防ぐ規範への合意だったのです。

ところで、現代の世界宗教はもはやお互いに論争しません。例えばカトリックのローマ教皇はユダヤ教の指導者を「兄」、イスラム教の指導者を「兄弟」と呼び対話を続けています。教義が異なっていても会話し、人間性について合意することは可能なのです。
November 10, 2025 at 7:27 AM
一方、英語圏の哲学者らは、この人権というアイデアへの懐疑論をしつこく唱え続けました。ロールズ、ローティといった著名な哲学者も、人権への懐疑論を唱えています。

哲学的な異論に対して、アマルティア・センは次のように反論します。なるほど、「すべての人の尊厳と権利」という概念は抽象的・超越的な概念であり、経験を重んじる哲学とは相容れないかもしれない。しかし、英語圏で主流となっている功利主義の「功利」も、やはり抽象的・超越的な概念ではないか?

正義のアイデアを論じるにはなんらかの抽象概念を持ち出す必要がある。

つまり、私たちは、なんらかの公理系を選び取る必要がある。
November 10, 2025 at 7:21 AM
さらにさらに補足。

公理系の例え話を用いるなら、例えば非ユークリッド幾何学を用いて家を建てることは理論的には可能です。可能ですが、おそらく想定外の出来事が相次ぎ、事故やトラブルを招く可能性が大でしょう。

(あるいはチューリング機械とは異なる原理の計算機で複雑な情報システムを作る例え話も考えられますね)

よく検証され、使い慣れた公理系を用いることが、コスト面でも安全面でも合理的と考えられます。

人権システムは戦後80年にわたり世界の複雑な問題に取り組み知恵を蓄え続けてきました。

この人類の知恵を無視するよりも、積極的に有効活用することが、私たち全員の福利の向上につながると考えています。
November 9, 2025 at 12:24 PM
さらに補足。

一連のスレッドのキー・センテンスは自明だと思いますが、念のため強調しておきます。

「つまり人権という公理系を採用せずに国家を運営することは(理屈の上では)可能だが、それは重大な犯罪に至る可能性をもつ」

ここが大事なところなので、見落としのないようお願いします。

さらに念のため、以下のスレッドを引用します。スケールは違いますが、同じ領域の話です。
bsky.app/profile/akio...
本日放送の「虎に翼」92話では、高校生の森口美佐江(演じるのは片岡凜)が、「なぜ、悪い人からものを盗ってはいけないのか」「なぜ、自分のからだを好きなように使ってはいけないのか」「なぜ、人を殺してはいけないのか」「納得できる答を聞かせてくれますか?」と問いかけ、主人公の寅子は戸惑います。

ドラマのこの先の展開で、この問いかけに対する決着を見せてくれるものと期待しています。ここでは、現時点で思うところを記します。

「なぜ、悪を為してはいけないのか?」

このような問いかけはサブカルチャーでよく見る話題かもしれません。この問いについて考えた哲学者の中で、重要なのは18世紀のカントです。
November 9, 2025 at 11:49 AM
補足続き:

ひとつ補足が必要なこととして、短文SNSでロジックを省略した書き方をしていることは、私の場合、よくあります。

例えば、今回の書き込みで「天賦人権説を採用しない」を「異なる公理系を採用している」と「読む」部分は、展開するとそれなりの文字数が必要だと思われますが、この投稿の想定読者にとっては自明と考え説明を省略しています。

このように自明なロジックを省略することは数学や物理の本では普通の書き方ですが、人文学や法学の分野ではそうではないようです。このあたり、説明スタイルに反省の余地はあるかもしれないとは思っております。
November 9, 2025 at 10:22 AM
補足続き:

人権に関する本をかなり集めましたが、説明スタイルは論者により、少しずつ異なります。

人権の歴史を語る切り口も、例えばアメリカ人の論者と、中国人の論者では、重点をあてるポイントがはっきり違っていたりもします。

人権のアイデアは全地球的なものなのですから、異なる文化、宗教をもつ人々が合意できるアイデア——すなわち多元的なアイデアでなければならないことは自明です。

もちろん、法律や哲学や歴史や国際関係論などの分野の専門家からご指摘いただければ傾聴します。なるべく分かりやすく、伝わりやすく、かつなるべく間違っていない内容を心がけています。
November 9, 2025 at 9:56 AM
補足:
さいきん、いろいろな異なる言い方で人権を説明する試みをしています。その根拠は、「人権とは多元的なアイデアである」ということです。

世界人権宣言に始まる国際人権法の体系に矛盾しない限りにおいて、人権にはいろいろな種類の説明スタイルがありえると考えています。

「人権とは多元的なアイデアである」という発想は、世界人権宣言の起草時点ですでにありました。キリスト教徒もイスラム教徒も仏教徒も無神論者も、マルクス・レーニン主義者も自由主義者も、儒教の論者もカント哲学の論者も功利主義の論者も合意でき、それぞれの世界観で解釈して同じ結論にたどり着く——人権とはそういう種類のものです。
November 9, 2025 at 9:36 AM