『ほぼニートな俺が司書の先生に恋をしました』コミカライズ原作担当作品・ジーンpixivにて連載中。
こちらには全年齢向けを中心に掲載予定。
(終)
こんな感じの全年齢向けBL書いてます。
原作担当した作品のコミカライズがこちらになります!
#創作BL #あまノベ #ポスノベ
↓
ほぼニートな俺が司書の先生に恋をしました - pixivコミック
comic.pixiv.net/works/11114
(終)
こんな感じの全年齢向けBL書いてます。
原作担当した作品のコミカライズがこちらになります!
#創作BL #あまノベ #ポスノベ
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ほぼニートな俺が司書の先生に恋をしました - pixivコミック
comic.pixiv.net/works/11114
それって、“永久就職”ってやつですか? と、訊き返そうにも、周りには見知った顔が多くて問い返せない。焚火のせいではなく顔が熱く赤くなっていく俺を、お揃いの法被を着ていつもより甘く笑っている辻さんは見つめていた。
(続く)
それって、“永久就職”ってやつですか? と、訊き返そうにも、周りには見知った顔が多くて問い返せない。焚火のせいではなく顔が熱く赤くなっていく俺を、お揃いの法被を着ていつもより甘く笑っている辻さんは見つめていた。
(続く)
「え、役場にっすか? いやー、俺、頭悪いから……試験とか絶対無理……」
リップサービスでそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、そこに恋愛的なものはない。だから俺は曖昧に笑ったのだけれど、「いや、試験とかないから」と、辻さんは言うのだ。
「え? コネってことっすか?」
いまどき、どんな小さな役場でも試験はあるだろうに……と、俺が首をかしげていると、辻さんは俺に手招きして、耳打ちした。
(続く)
「え、役場にっすか? いやー、俺、頭悪いから……試験とか絶対無理……」
リップサービスでそう言ってもらえるのは嬉しいけれど、そこに恋愛的なものはない。だから俺は曖昧に笑ったのだけれど、「いや、試験とかないから」と、辻さんは言うのだ。
「え? コネってことっすか?」
いまどき、どんな小さな役場でも試験はあるだろうに……と、俺が首をかしげていると、辻さんは俺に手招きして、耳打ちした。
(続く)
「葉山くんはさ、来年はどうするの? またボランティア来る?」
「そっすね、来たいなーって思ってます」
だって、そこにあなたがいるのなら、それだけで俺のボランティア参加理由だから。
辻さんは、「そっか」と言って小さく笑い、甘酒をひと口飲む。その横顔が、焚火の明かりに照らされていつになく色気があるように見えてドキドキする。紙コップを持つ指先も、それに続く男らしい腕も、全部、俺だけのものにできたらいいのに――そんなこと、考えてしまう。無謀だってわかっているのに。
(続く)
「葉山くんはさ、来年はどうするの? またボランティア来る?」
「そっすね、来たいなーって思ってます」
だって、そこにあなたがいるのなら、それだけで俺のボランティア参加理由だから。
辻さんは、「そっか」と言って小さく笑い、甘酒をひと口飲む。その横顔が、焚火の明かりに照らされていつになく色気があるように見えてドキドキする。紙コップを持つ指先も、それに続く男らしい腕も、全部、俺だけのものにできたらいいのに――そんなこと、考えてしまう。無謀だってわかっているのに。
(続く)
「そっすか? だって、辻さんちの味なんすよね? 俺にはレア中のレアっすよ」
「どこにでもある味だよ」
そう言いながら、辻さんはさり気なく俺の隣の椅子に腰を下ろし、一緒に甘酒を飲み始める。境内では大人の神楽が始まり、祭りはいよいよフィナーレだ。
毎年、ただ辻さんと一緒にいたくてボランティアをやっている。いつまでそれが出来るのかはわからないけど、許されるならずっと……辻さんがこの地域にいてくれる間はずっと、俺はこの人の隣にいたい。
(続く)
「そっすか? だって、辻さんちの味なんすよね? 俺にはレア中のレアっすよ」
「どこにでもある味だよ」
そう言いながら、辻さんはさり気なく俺の隣の椅子に腰を下ろし、一緒に甘酒を飲み始める。境内では大人の神楽が始まり、祭りはいよいよフィナーレだ。
毎年、ただ辻さんと一緒にいたくてボランティアをやっている。いつまでそれが出来るのかはわからないけど、許されるならずっと……辻さんがこの地域にいてくれる間はずっと、俺はこの人の隣にいたい。
(続く)
「甘酒。葉山くん、好きでしょう?」
「あ、あざーっす……」
受け取った熱いほどの甘酒は良いにおいで、俺は早速一口すする。生姜の良く効いたそれは、いつの間にか芯まで冷えていたからだに沁みわたる。なにより、俺の好物を知っててくれたのが嬉しい。
「うめーッ……」
「それはよかった。ウチのお手製なんだよ、これ」
「え、そうなんすか?! めっちゃレアだ……」
思いがけず好きな人の家の味を知り、途端に手の中の一杯に物凄い価値が生まれる。
(続く)
「甘酒。葉山くん、好きでしょう?」
「あ、あざーっす……」
受け取った熱いほどの甘酒は良いにおいで、俺は早速一口すする。生姜の良く効いたそれは、いつの間にか芯まで冷えていたからだに沁みわたる。なにより、俺の好物を知っててくれたのが嬉しい。
「うめーッ……」
「それはよかった。ウチのお手製なんだよ、これ」
「え、そうなんすか?! めっちゃレアだ……」
思いがけず好きな人の家の味を知り、途端に手の中の一杯に物凄い価値が生まれる。
(続く)
一番いいのは同じ役場に就職することなんだろうけれど、俺、頭悪いし、そもそも辻さんモテそうだから、俺が就職するまでに結婚とかしちゃいそうだし。
(なにより、一秒でもいまは一緒にいたいんだよな……)
動機が不純で、叶う望みなんてない恋だってわかっている。向こうは立派なお役所勤めで、俺は地元の高校のヤンキー崩れなんだから。
(それに……恋愛対象にすらなれるかどうか、わかんねーし……)
(続く)
一番いいのは同じ役場に就職することなんだろうけれど、俺、頭悪いし、そもそも辻さんモテそうだから、俺が就職するまでに結婚とかしちゃいそうだし。
(なにより、一秒でもいまは一緒にいたいんだよな……)
動機が不純で、叶う望みなんてない恋だってわかっている。向こうは立派なお役所勤めで、俺は地元の高校のヤンキー崩れなんだから。
(それに……恋愛対象にすらなれるかどうか、わかんねーし……)
(続く)
年始の子ども神楽に参加した子ども達に配るお菓子のことを訊かれ、俺は不意に現実に戻される。
いまは新年の地域祭りで、俺はその手伝いをしていて……決して、この町の地域課の辻さんに見惚れていたわけではない。断じて違う。
「は、はい! 五十セット、全部あるっす!」
「おお、ありがとうね。これは僕が配っちゃうから、葉山くんはあっちで焚火にあたっておいで」
そう、促してくる辻さんの手のひらが、そっと俺の背中を押してくる。触れた瞬間、心電図だったらきっと線が振り切れているんじゃないかというほど俺の心臓は跳ねた気がする。
(続く)
年始の子ども神楽に参加した子ども達に配るお菓子のことを訊かれ、俺は不意に現実に戻される。
いまは新年の地域祭りで、俺はその手伝いをしていて……決して、この町の地域課の辻さんに見惚れていたわけではない。断じて違う。
「は、はい! 五十セット、全部あるっす!」
「おお、ありがとうね。これは僕が配っちゃうから、葉山くんはあっちで焚火にあたっておいで」
そう、促してくる辻さんの手のひらが、そっと俺の背中を押してくる。触れた瞬間、心電図だったらきっと線が振り切れているんじゃないかというほど俺の心臓は跳ねた気がする。
(続く)
これは、十二歳離れた弟の小学校でかなり無理やりやる羽目になった、図書の整備ボランティアを通じての出会いと新たな人生の始まりの話だ。
こちらの作品のコミカライズがこちらになります!
#創作BL #あまノベ #ポスノベ #司書恋
↓
ほぼニートな俺が司書の先生に恋をしました - pixivコミック
comic.pixiv.net/works/11114
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溜め息すらつくのもはばかられるような中、俺はとりあえず目の前のボロボロの絵本を手に取った。
(続く)
溜め息すらつくのもはばかられるような中、俺はとりあえず目の前のボロボロの絵本を手に取った。
(続く)
俺がクジラ先生の言葉を了解するようにうなずくと、彼は安堵したように小さく笑み、そして図書ボラと呼ばれる、この学校の図書室の本の修繕などを請け負うボランティアのおばさん達……じゃなくて、保護者達の方も向いて、「じゃあ、今日もお願いします」と言った。
「じゃ、泰吾くんも席について」
図書ボラの代表者だという早川さんというおばさんに促されるまま、俺は空いている席につく。目の前には、ボロボロに傷んだいろいろな本と、ボンドやらなんかのテープ? やらが山のように並んでいる。
(続く)
俺がクジラ先生の言葉を了解するようにうなずくと、彼は安堵したように小さく笑み、そして図書ボラと呼ばれる、この学校の図書室の本の修繕などを請け負うボランティアのおばさん達……じゃなくて、保護者達の方も向いて、「じゃあ、今日もお願いします」と言った。
「じゃ、泰吾くんも席について」
図書ボラの代表者だという早川さんというおばさんに促されるまま、俺は空いている席につく。目の前には、ボロボロに傷んだいろいろな本と、ボンドやらなんかのテープ? やらが山のように並んでいる。
(続く)
視線に曝されてうつむきがちにしている俺の肩をポンと叩いてそう声をかけてきたのは、この|潮市立太刀魚小学校《うしおしりつたちうおしょうがっこう》の司書教諭というものをしているという、浜田|勇魚《いさな》という、三十過ぎのおっさんだ。
勇魚がクジラの昔の名前だからということから、「クジラ先生」と呼ばれているとは聞いているが、その割にはひょろりとした薄っぺらな身体で、どっちかと言うと太刀魚に似ている。
(続く)
視線に曝されてうつむきがちにしている俺の肩をポンと叩いてそう声をかけてきたのは、この|潮市立太刀魚小学校《うしおしりつたちうおしょうがっこう》の司書教諭というものをしているという、浜田|勇魚《いさな》という、三十過ぎのおっさんだ。
勇魚がクジラの昔の名前だからということから、「クジラ先生」と呼ばれているとは聞いているが、その割にはひょろりとした薄っぺらな身体で、どっちかと言うと太刀魚に似ている。
(続く)
そうは言いつつも、俺の金色の長い髪だとか、左右それぞれ三個ずつくらいつけているピアスだとかが気になっているのはわかっているんだ。そして、自分の子どもは俺みたいな姿をさせるまい、って思っていることも。
いやでたまらない。こんな小学校の古臭い図書室なんかでちまちまおばさんたちに囲まれてタダ働きだなんて。
でも仕方ないんだ。これも、あいつを――歩生を俺みたいにしないために必要な関わり合いだと言われているから。
(続く)
そうは言いつつも、俺の金色の長い髪だとか、左右それぞれ三個ずつくらいつけているピアスだとかが気になっているのはわかっているんだ。そして、自分の子どもは俺みたいな姿をさせるまい、って思っていることも。
いやでたまらない。こんな小学校の古臭い図書室なんかでちまちまおばさんたちに囲まれてタダ働きだなんて。
でも仕方ないんだ。これも、あいつを――歩生を俺みたいにしないために必要な関わり合いだと言われているから。
(続く)