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UCOは「進化する自治を構想する」をテーマに活動しています。
様々な視点から、自治のあり方や市民と行政のコミュニケーションのあり方を探ります。
また、市民の意見をどのように行政に反映させることができるかを探ることも目的としている。
ウェブサイトでは、レポートやコラムなどを掲載。
講演会や読者との対話を通じて、「進化する自治」のあり方を共に考えていきます。
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UCO is working on the theme 'Envisioning an Evolving Self-Government'.
From various perspectives, we will explore the state of self-government and communication between citizens and the administration.
The project also aims to explore how citizens' opinions can be reflected in public administration.
都市は常に老いる。
しかし、老いを管理し、更新し、次の世代に手渡すことができる都市だけが生き残る。都市の価値は、その未来を諦めない意思で決定づけられる。
#都市政策htag/%E9%83%BD%E5%B8%82%E6%94%BF%E7%AD%96" class="hover:underline text-blue-600 dark:text-sky-400 no-card-link">#都市政策 #まちづくり
#進化する自治
#木造密集市街地
#都市政策
#空き家対策基本法
#vision50
#都市ストック
#空き家問題
大阪市空き家問題の断層<5-まとめ>
都市は“更新力”を失うと衰退する 大阪市の空き家問題は、単に人口減少や高齢化によって生まれる一般的な“余剰住宅”の問題ではない。これまで4回にわたって整理してきたように、空き家の構造は都市の内部状態そのものであり、大阪市における空き家とは「都市の老化」「制度の疲弊」「地域の分断」が絡み合った総合的な都市課題である。 大阪の街を歩けば、外側は活気に満ちている。梅田の超高層群、難波・心斎橋の商業圏、再開発が進む中之島。インバウンドも回復し、表層的には成長している。しかし、その足元で住宅ストックの老朽化が進行し、都市の内部では静かだが確実な“衰退装置”が稼働している。 都市は更新力を失うと衰退する。大阪市の空き家問題は、まさにその更新力が低下した結果、都市のどこでどのような歪みが蓄積しているのかを可視化する鏡である。この最終回では、これまでの4モデル──都心マンションの静かな老化、郊外戸建の停滞、木造密集地の危機、潜在ストックの未活用──を総合し、大阪市に求められる政策の優先順位と都市再生の方向性を示したい。 大阪の空き家問題は単に“場所”ではない 大阪市の空き家は29万戸を超え、空き家率も全国平均を上回る。しかし、この数字そのものよりも重要なのは、空き家が都市のどの層で、どのような条件で発生しているのかである。 都心部では、築古マンションが更新されず、人口増と老朽化が同居する“二重都市”化 郊外戸建は、売れない・貸せない・壊せない状態で時間だけが積み重なり、沈殿 木造密集地は、都市リスクとしての空き家が急増し、消防・防災・自治の限界点 潜在ストック(淀川区・東淀川区など)は、活用されずに眠り続ける都市の余剰資源 これは単なる“場所ごとの問題”ではなく、都市そのものが「新陳代謝」と「更新の仕組み」を失いつつあることの証左である。 都市が成長するかどうかを決めるのは、人口やGDPではない。“使われ続ける建物”“住み続けられるストック”が循環するかどうかである。大阪市は今、その循環が止まりつつある。 大阪市空き家政策は「計画あり実働なし」の構造的欠陥 大阪市は空き家対策計画を策定しているが、現場での実効性は非常に弱い。理由は明確である。 空き家対策を担う人員が少ない 所有者調査・合意形成など、最も負荷の高い部分に行政が踏み込んでいない 地区単位の面的再生のビジョンが欠落 建築・防災・福祉の縦割りで、空き家が「誰の仕事でもない」状態 結果として、危険度が高いエリアほど手つかずで放置される 大阪市の空き家問題は、制度や予算の不足だけではなく、「動かす仕組みが存在しない」ことが核心である。 空き家は取り壊せば解決するわけではない。所有者不明土地に踏み込み、地区ごとにストックを整理し、再配置し、再生の方向性を示す必要がある。しかし、大阪市はこれを都市政策の中心に据えていない。表層の成長(再開発・タワマン・インバウンド)が優先され、内部の再生が後回しにされ続けてきた結果が、今の構造的疲弊を生んでいる。 4つのモデルで見る“大阪の都市構造の歪み” 本稿で分析してきた4つのエリアモデルは、都市のどこに更新不全が起きているかを示している。 大阪府内の「地震時等に著しく危険な密集市街地」の状況(R7.3月時点)より引用 ① 都心マンション密集エリア人口は増えるが、築古マンションが更新されない。表層の明るさと内部の老化が同居し、管理不全予備軍が膨れ上がる。 ② 郊外戸建ストック個人の裁量では動かせないストックの典型。相続・解体コスト・市場価値の低さが絡み、住宅が沈殿していく。 ③ 木造密集旧市街地都市リスクの最前線。火災、倒壊、所有者不明。都市の“負の臓器”として限界点に達している。 ④ 潜在ストック(淀川・東淀川など)本来活用すべき中間層ストックが眠ったまま。都市の“成長の余白”が生かされていない。 これら4つは個別問題ではなく、都市の更新機能がどの階層で止まっているかを示すレイヤー構造である。 都市としての優先順位は何か 大阪市が空き家問題に取り組む際、優先順位は明確である。 最優先:木造密集地(③) ここは都市リスクそのものである。面的再生・所有者不明土地の整理・防災動線の確保を最優先すべきである。行政が本気で動かない限り、民間だけでは絶対に解けない。 第二優先:築古マンション群(①) 管理不全マンションへの早期介入制度と、地区単位でのマンション再生スキームが必要である。20〜30年後、ここが都市の最大の問題に転じる。 第三優先:郊外戸建(②) 個別解体では追いつかない可能性が高い。相続支援・解体支援・用途転換を組み合わせた面的整理が必要である。 第四優先:潜在ストック(④) 本来は最もコスト効率よく再生できる層であるため、ここに再生エネルギーを注ぎ込むことが都市全体の生産性向上につながる。 つまり、危険性の高い領域から動かす一方で、再生効率の高い領域へ投資し、都市の更新の循環を再起動することが必要である。 進化する自治──行政だけでは不可能な領域へ 大阪市の空き家問題がここまで複雑化した理由は、行政・住民・専門家・市場が互いに断絶したまま時間が経過したからである。都市再生は行政だけでも、住民だけでも、専門家だけでも成り立たない。 必要なのは、「自治としての再生力を社会に取り戻すこと」である。 所有者不明問題は専門家と行政のチームが必要 面的再生は住民・建築士・市の協働が必要 相続・解体・用途転換は民間支援が不可欠 地区の未来像は地域コミュニティが描く必要がある 都市を“上から作る”時代は終わった。これからは“関係性を編み直す”ことで都市が再生される時代である。 あなたが取り組む「進化する自治」は、その解の一つである。空き家問題は都市の弱さの現れであると同時に、自治が再構成されるきっかけにもなる。都市の更新力を取り戻すことは、自治の更新でもある。 都市の価値は、未来を諦めない意思である 大阪市の空き家問題は、放置すれば確実に都市の寿命を縮める。しかし逆に言えば、ここに介入することが都市を若返らせる最大の機会でもある。 都市は常に老いる。しかし、老いを管理し、更新し、次の世代に手渡すことができる都市だけが生き残る。都市の価値は、その未来を諦めない意思で決定づけられる。 その意味で、今の大阪は瀬戸際にある。外側の成長に惑わされず、内側の老化と向き合うこと。空き家を「余剰」ではなく「都市の要治療部分」として扱うこと。行政・住民・専門家が協働し、新しい自治を構築すること。 この「協働」をどう新しい動きにしていくのかが「進化する自治」として問われているのである。 <山口 達也> 前の記事を読む 続く ucoの活動をサポートしてください
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December 9, 2025 at 12:04 AM
都市は常に老いる。
しかし、老いを管理し、更新し、次の世代に手渡すことができる都市だけが生き残る。都市の価値は、その未来を諦めない意思で決定づけられる。
#都市政策htag/%E9%83%BD%E5%B8%82%E6%94%BF%E7%AD%96" class="hover:underline text-blue-600 dark:text-sky-400 no-card-link">#都市政策 #まちづくり
#進化する自治
#木造密集市街地
#都市政策
#空き家対策基本法
#vision50
#都市ストック
#空き家問題
大阪市空き家問題の断層<5-まとめ>
都市は“更新力”を失うと衰退する 大阪市の空き家問題は、単に人口減少や高齢化によって生まれる一般的な“余剰住宅”の問題ではない。これまで4回にわたって整理してきたように、空き家の構造は都市の内部状態そのものであり、大阪市における空き家とは「都市の老化」「制度の疲弊」「地域の分断」が絡み合った総合的な都市課題である。 大阪の街を歩けば、外側は活気に満ちている。梅田の超高層群、難波・心斎橋の商業圏、再開発が進む中之島。インバウンドも回復し、表層的には成長している。しかし、その足元で住宅ストックの老朽化が進行し、都市の内部では静かだが確実な“衰退装置”が稼働している。 都市は更新力を失うと衰退する。大阪市の空き家問題は、まさにその更新力が低下した結果、都市のどこでどのような歪みが蓄積しているのかを可視化する鏡である。この最終回では、これまでの4モデル──都心マンションの静かな老化、郊外戸建の停滞、木造密集地の危機、潜在ストックの未活用──を総合し、大阪市に求められる政策の優先順位と都市再生の方向性を示したい。 大阪の空き家問題は単に“場所”ではない 大阪市の空き家は29万戸を超え、空き家率も全国平均を上回る。しかし、この数字そのものよりも重要なのは、空き家が都市のどの層で、どのような条件で発生しているのかである。 都心部では、築古マンションが更新されず、人口増と老朽化が同居する“二重都市”化 郊外戸建は、売れない・貸せない・壊せない状態で時間だけが積み重なり、沈殿 木造密集地は、都市リスクとしての空き家が急増し、消防・防災・自治の限界点 潜在ストック(淀川区・東淀川区など)は、活用されずに眠り続ける都市の余剰資源 これは単なる“場所ごとの問題”ではなく、都市そのものが「新陳代謝」と「更新の仕組み」を失いつつあることの証左である。 都市が成長するかどうかを決めるのは、人口やGDPではない。“使われ続ける建物”“住み続けられるストック”が循環するかどうかである。大阪市は今、その循環が止まりつつある。 大阪市空き家政策は「計画あり実働なし」の構造的欠陥 大阪市は空き家対策計画を策定しているが、現場での実効性は非常に弱い。理由は明確である。 空き家対策を担う人員が少ない 所有者調査・合意形成など、最も負荷の高い部分に行政が踏み込んでいない 地区単位の面的再生のビジョンが欠落 建築・防災・福祉の縦割りで、空き家が「誰の仕事でもない」状態 結果として、危険度が高いエリアほど手つかずで放置される 大阪市の空き家問題は、制度や予算の不足だけではなく、「動かす仕組みが存在しない」ことが核心である。 空き家は取り壊せば解決するわけではない。所有者不明土地に踏み込み、地区ごとにストックを整理し、再配置し、再生の方向性を示す必要がある。しかし、大阪市はこれを都市政策の中心に据えていない。表層の成長(再開発・タワマン・インバウンド)が優先され、内部の再生が後回しにされ続けてきた結果が、今の構造的疲弊を生んでいる。 4つのモデルで見る“大阪の都市構造の歪み” 本稿で分析してきた4つのエリアモデルは、都市のどこに更新不全が起きているかを示している。 大阪府内の「地震時等に著しく危険な密集市街地」の状況(R7.3月時点)より引用 ① 都心マンション密集エリア人口は増えるが、築古マンションが更新されない。表層の明るさと内部の老化が同居し、管理不全予備軍が膨れ上がる。 ② 郊外戸建ストック個人の裁量では動かせないストックの典型。相続・解体コスト・市場価値の低さが絡み、住宅が沈殿していく。 ③ 木造密集旧市街地都市リスクの最前線。火災、倒壊、所有者不明。都市の“負の臓器”として限界点に達している。 ④ 潜在ストック(淀川・東淀川など)本来活用すべき中間層ストックが眠ったまま。都市の“成長の余白”が生かされていない。 これら4つは個別問題ではなく、都市の更新機能がどの階層で止まっているかを示すレイヤー構造である。 都市としての優先順位は何か 大阪市が空き家問題に取り組む際、優先順位は明確である。 最優先:木造密集地(③) ここは都市リスクそのものである。面的再生・所有者不明土地の整理・防災動線の確保を最優先すべきである。行政が本気で動かない限り、民間だけでは絶対に解けない。 第二優先:築古マンション群(①) 管理不全マンションへの早期介入制度と、地区単位でのマンション再生スキームが必要である。20〜30年後、ここが都市の最大の問題に転じる。 第三優先:郊外戸建(②) 個別解体では追いつかない可能性が高い。相続支援・解体支援・用途転換を組み合わせた面的整理が必要である。 第四優先:潜在ストック(④) 本来は最もコスト効率よく再生できる層であるため、ここに再生エネルギーを注ぎ込むことが都市全体の生産性向上につながる。 つまり、危険性の高い領域から動かす一方で、再生効率の高い領域へ投資し、都市の更新の循環を再起動することが必要である。 進化する自治──行政だけでは不可能な領域へ 大阪市の空き家問題がここまで複雑化した理由は、行政・住民・専門家・市場が互いに断絶したまま時間が経過したからである。都市再生は行政だけでも、住民だけでも、専門家だけでも成り立たない。 必要なのは、「自治としての再生力を社会に取り戻すこと」である。 所有者不明問題は専門家と行政のチームが必要 面的再生は住民・建築士・市の協働が必要 相続・解体・用途転換は民間支援が不可欠 地区の未来像は地域コミュニティが描く必要がある 都市を“上から作る”時代は終わった。これからは“関係性を編み直す”ことで都市が再生される時代である。 あなたが取り組む「進化する自治」は、その解の一つである。空き家問題は都市の弱さの現れであると同時に、自治が再構成されるきっかけにもなる。都市の更新力を取り戻すことは、自治の更新でもある。 都市の価値は、未来を諦めない意思である 大阪市の空き家問題は、放置すれば確実に都市の寿命を縮める。しかし逆に言えば、ここに介入することが都市を若返らせる最大の機会でもある。 都市は常に老いる。しかし、老いを管理し、更新し、次の世代に手渡すことができる都市だけが生き残る。都市の価値は、その未来を諦めない意思で決定づけられる。 その意味で、今の大阪は瀬戸際にある。外側の成長に惑わされず、内側の老化と向き合うこと。空き家を「余剰」ではなく「都市の要治療部分」として扱うこと。行政・住民・専門家が協働し、新しい自治を構築すること。 この「協働」をどう新しい動きにしていくのかが「進化する自治」として問われているのである。 <山口 達也> 前の記事を読む 続く ucoの活動をサポートしてください
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December 8, 2025 at 3:00 AM
エレキギター環境が近年大きく変わりつつあるが、ギターを弾くのはどこまでも人間。
このギャップになにかヒントを感じる日々。
#ギブソン
#エレキギター
#フェンダー
#インフラ
#自治
エレキギターとインフラ
近年劇的に変わったエレキギターアンプとエフェクタ いつも硬い話が多いのでたまには趣味の話をしよう。 ①かつてエレキギターは、音を増幅するアンプにつなぐだけだった。 ②その電気特性を利用して、音の波形を変えて効果を変える「エフェクタ」をその間にはさむことで音色は劇的に進化した。 ③さらにエフェクタは、1台で様々なエフェクタを兼用する「マルチエフェクタ」が誕生した。 ④現在最も新しいのは、アンプの中にエフェクタを内蔵し、かつそのエフェクタのコントロールはスマホでするというものだ。一見すると元に戻ったようだが、電気処理の仕方は原形をとどめていない。 マルチエフェクタで最も小さなPOCKETMASTER これ1台でエフェクタ6台分の回路が組み込まれている世界最小のマルチエフェクタだ。給電はUSB-Cで行う。 SONICAKE POCKET MASTER 革命的なアンプ SPARK GO SPARK GOは、エフェクタを内蔵したデジタルアンプで最も小さいものである。(2025年11月段階)もう既にスマホよりも小さい。アンプとしては、アンプシミュレーターが内蔵されており、様々なアンプの音色が出せるというデジタルアンプであり、スマホからアプリで管理している。 Positive Grid SPARK GO 都市インフラとギターアンプと どれだけ機器が最新になったとしても、エレキギターは手で弾く。どれだけ社会が進歩しようとも、人間の大きさは3mにはならないし、毎日お腹はすくし、睡眠を取らないと死んでしまう。エレキギターに限らず楽器の良いところは、どこまで機械が介入してこようとも、人間が演奏するというところが残る点だ。 進化する自治もまた、ものすごくデジタルやAI化されていく部分と、全くアナログのまま、人間の部分は残る。 最近の劇的なエレキギター環境の変化を体感するほどに、都市や自治というものに対してのスピード感のあるデジタルAI化と、古来から変わらない人間の生命体としてのスピードをどう折り合わせていくのか、このあたりになにかヒントが有るように感じている。 <山口 達也> ucoの活動をサポートしてください
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December 7, 2025 at 11:51 PM
カジノをつくりながらギャンブル障害対策を進める矛盾【2025.12.05号】uco
♪大阪府が進めるギャンブル障害対策に実行力は伴っているだろうか
note.com/ucosaka/n/nc...
#進化する自治
#ギャンブル
#カジノ
#空き家問題
#ギャンブル障害
#大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画
カジノをつくりながらギャンブル障害対策を進める矛盾【2025.12.05号】|uco https://ucosaka.com/
♪大阪府が進めるギャンブル障害対策に実行力は伴っているだろうか 今週2日、大阪府は今年度第2回目のギャンブル等依存症対策推進会議を開催した。現在の「第2期大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画」が今年度で実施完了となるため、2026年度からの「第3期大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画」を策定するためのもの。今回は、8月に提示された素案に対して、学識経験者や医療関係者、ギャンブル障害をサポートして...
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December 5, 2025 at 11:16 AM
木密の空き家問題は「誰が悪い」という種類の話ではなく、「都市全体が積み残してきた構造的課題」が限界点に達しているということ
#都市政策htag/%E9%83%BD%E5%B8%82%E6%94%BF%E7%AD%96" class="hover:underline text-blue-600 dark:text-sky-400 no-card-link">#都市政策 #まちづくり
#進化する自治
#木造密集市街地
#都市政策
#空き家対策基本法
#vision50
#都市ストック
#空き家問題
大阪市空き家問題の断層<4>
4つのエリアモデルで考える第4回 大阪市の人口増なのに空き家増という矛盾。都市のエネルギーが「新築供給」と「都心回廊の表層成長」に偏り、既存の住宅ストックが老朽化したまま放置される構造が定着してしまった。 今回も大阪市の空き家問題を4つのエリアモデルを仮想して分類し、個別に掘り下げて論じることを試みるその4回目。 ① 都心部マンション密集エリア② 郊外戸建ストックエリア③ 木造密集旧市街地エリア④ 潜在活用ストックエリア ③ 木造密集旧市街地エリアについて論考する。 木造密集地は都市の“限界点”、その構造的疲労 大阪市における空き家問題の中で、最も深刻で、そして最も正面から語られにくい領域が木造密集市街地である。西成区、生野区、東住吉区、大正区、港区などに広がる長屋・木造住宅群は、戦後の住宅不足期に形成されたまま老いていき、都市としての耐性を徐々に失っている。この地域の空き家問題は、単に建物の劣化にとどまらず、自治・防災・行政能力の限界がそのまま露出している場所である。 木造密集地の空き家率は、西成区25.9%、生野区22.8%と、市内でも突出して高い。これは単に「古い建物が多い」という話ではなく、都市の一部が事実上“崩壊過程”に入っていることを示す数値である。 空き家が目に見える形で増えているだけでなく、まだ居住されている建物の多くがすでに限界に達しており、空き家化は時間の問題という状況が広がっている。 これらの地域に共通する最大の特徴は、“誰にも動かせないストックが密集している”ということである。所有者不明、相続放棄、登記未更新、長屋の一部だけ空き家化する構造。いずれも行政が動き出す前に、問題が複雑化し、手が出せないところまで進行してしまう。大阪市はこの事態を把握しているものの、実働部隊も制度的後押しもなく、空き家問題は地区全体の問題として放置されている。 所有者不明土地の問題は深刻である。長屋の所有権は分散し、数代にわたる相続で誰がどの部分を所有しているのか不明になっているケースも多い。「登記簿上の所有者は死亡している」「相続人が互いに連絡を取れない」「みなし相続人が国外にいる」という状況が珍しくない。行政が除却したくても、所有者の同意が得られず、法的手続きにも多大な時間がかかり、結果として構造的放置が続く。 木密地帯のリスクはまた火災に直結する。戦前の木造家屋は建築基準法が制定された以前の築年数の場合、道路幅は1.8m以下の路地であることも多く、一軒の火災が数棟へ延焼する可能性は極めて高い。消防車は侵入できず、風向きによっては街区全体が延焼帯になりうる。これは住宅問題ではなく、都市そのものの存続に関わる問題である。 大阪市の行政対応 大阪府内の「地震時等に著しく危険な密集市街地」の状況(R7.3月時点)より引用 しかし大阪市の現状を見る限り、危険性に見合った対応はほとんど取られていない。上記のように防災上の著しく危険な未収市街地は解消されてきているような報告になっているが、実際の危険空き家認定もその対策も限定的で、除却は所有者の同意が前提であり、制度上の抜本的な改革は見られない。 行政が動けないのは、制度の不備だけではない。 大阪市の都市政策は長年にわたり“表層の成長”を優先し、都市内部の老朽化には目を向けてこなかった。再開発、タワーマンション、インバウンド。この三つが大阪の都市像を規定し、それ以外の領域──とくに基盤となる住宅ストック──は後回しにされてきた。予算も人材もそこには配分されず、結果として木密の空き家は自治の空白地帯となった。 木密の空き家は、所有者にとっても負担でしかない。売れない、貸せない、壊せない。 価値は低いのに、解体には高額の費用がかかる。近隣との関係性、心理的ハードル、相続人間の合意形成。動機がどこにもないまま、建物だけが劣化し続ける。この状態は、個人の努力では克服できない。都市の制度として解決する以外に方法がない領域である。 建築士の視点から見ても、木密は建て替えや再生は最も困難な領域のひとつである。 境界が曖昧で、建て替えると越境する。基礎は不明、柱は腐食、配管は露出。道路が狭く、施工機械が入れず、工事コストは跳ね上がる。再建できても周辺環境が変わらないため価値は上がらず、投資回収も困難である。 都市全体が積み残してきた構造的課題 つまり、木密の空き家問題は「誰が悪い」という種類の話ではなく、「都市全体が積み残してきた構造的課題」が限界点に達しているということにほかならない。 都市計画・住宅政策・福祉・防災・自治のあらゆる領域が接続しなければ解けない問題であるにもかかわらず、現況の大阪市の対応はあまりに手ぬるい。 だが、だからといって放置すれば、都市は加速度的に危険になる。人口減少よりも早く、建物の老朽化が都市の持続性を奪う。都市インフラの限界が、生活の限界へ直結してしまうのである。 次回の最終回では、これまでの4モデル──都心マンションの静かな老化、郊外戸建の停滞、木造密集地の危機、潜在ストックの未活用──を総合し、大阪市が何を優先し、どこから再生を始めるべきかを提案したい。空き家とは都市の余白ではなく、都市の未来そのものを映す鏡である。大阪市がその鏡にどう向き合うかが、これからの都市の寿命を決める。 <山口 達也> 前の記事を読む 続く ucoの活動をサポートしてください
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December 5, 2025 at 4:10 AM
木密の空き家問題は「誰が悪い」という種類の話ではなく、「都市全体が積み残してきた構造的課題」が限界点に達しているということ
#都市政策htag/%E9%83%BD%E5%B8%82%E6%94%BF%E7%AD%96" class="hover:underline text-blue-600 dark:text-sky-400 no-card-link">#都市政策 #まちづくり
#進化する自治
#木造密集市街地
#都市政策
#空き家対策基本法
#vision50
#都市ストック
#空き家問題
大阪市空き家問題の断層<4>
4つのエリアモデルで考える第4回 大阪市の人口増なのに空き家増という矛盾。都市のエネルギーが「新築供給」と「都心回廊の表層成長」に偏り、既存の住宅ストックが老朽化したまま放置される構造が定着してしまった。 今回も大阪市の空き家問題を4つのエリアモデルを仮想して分類し、個別に掘り下げて論じることを試みるその4回目。 ① 都心部マンション密集エリア② 郊外戸建ストックエリア③ 木造密集旧市街地エリア④ 潜在活用ストックエリア ③ 木造密集旧市街地エリアについて論考する。 木造密集地は都市の“限界点”、その構造的疲労 大阪市における空き家問題の中で、最も深刻で、そして最も正面から語られにくい領域が木造密集市街地である。西成区、生野区、東住吉区、大正区、港区などに広がる長屋・木造住宅群は、戦後の住宅不足期に形成されたまま老いていき、都市としての耐性を徐々に失っている。この地域の空き家問題は、単に建物の劣化にとどまらず、自治・防災・行政能力の限界がそのまま露出している場所である。 木造密集地の空き家率は、西成区25.9%、生野区22.8%と、市内でも突出して高い。これは単に「古い建物が多い」という話ではなく、都市の一部が事実上“崩壊過程”に入っていることを示す数値である。 空き家が目に見える形で増えているだけでなく、まだ居住されている建物の多くがすでに限界に達しており、空き家化は時間の問題という状況が広がっている。 これらの地域に共通する最大の特徴は、“誰にも動かせないストックが密集している”ということである。所有者不明、相続放棄、登記未更新、長屋の一部だけ空き家化する構造。いずれも行政が動き出す前に、問題が複雑化し、手が出せないところまで進行してしまう。大阪市はこの事態を把握しているものの、実働部隊も制度的後押しもなく、空き家問題は地区全体の問題として放置されている。 所有者不明土地の問題は深刻である。長屋の所有権は分散し、数代にわたる相続で誰がどの部分を所有しているのか不明になっているケースも多い。「登記簿上の所有者は死亡している」「相続人が互いに連絡を取れない」「みなし相続人が国外にいる」という状況が珍しくない。行政が除却したくても、所有者の同意が得られず、法的手続きにも多大な時間がかかり、結果として構造的放置が続く。 木密地帯のリスクはまた火災に直結する。戦前の木造家屋は建築基準法が制定された以前の築年数の場合、道路幅は1.8m以下の路地であることも多く、一軒の火災が数棟へ延焼する可能性は極めて高い。消防車は侵入できず、風向きによっては街区全体が延焼帯になりうる。これは住宅問題ではなく、都市そのものの存続に関わる問題である。 大阪市の行政対応 大阪府内の「地震時等に著しく危険な密集市街地」の状況(R7.3月時点)より引用 しかし大阪市の現状を見る限り、危険性に見合った対応はほとんど取られていない。上記のように防災上の著しく危険な未収市街地は解消されてきているような報告になっているが、実際の危険空き家認定もその対策も限定的で、除却は所有者の同意が前提であり、制度上の抜本的な改革は見られない。 行政が動けないのは、制度の不備だけではない。 大阪市の都市政策は長年にわたり“表層の成長”を優先し、都市内部の老朽化には目を向けてこなかった。再開発、タワーマンション、インバウンド。この三つが大阪の都市像を規定し、それ以外の領域──とくに基盤となる住宅ストック──は後回しにされてきた。予算も人材もそこには配分されず、結果として木密の空き家は自治の空白地帯となった。 木密の空き家は、所有者にとっても負担でしかない。売れない、貸せない、壊せない。 価値は低いのに、解体には高額の費用がかかる。近隣との関係性、心理的ハードル、相続人間の合意形成。動機がどこにもないまま、建物だけが劣化し続ける。この状態は、個人の努力では克服できない。都市の制度として解決する以外に方法がない領域である。 建築士の視点から見ても、木密は建て替えや再生は最も困難な領域のひとつである。 境界が曖昧で、建て替えると越境する。基礎は不明、柱は腐食、配管は露出。道路が狭く、施工機械が入れず、工事コストは跳ね上がる。再建できても周辺環境が変わらないため価値は上がらず、投資回収も困難である。 都市全体が積み残してきた構造的課題 つまり、木密の空き家問題は「誰が悪い」という種類の話ではなく、「都市全体が積み残してきた構造的課題」が限界点に達しているということにほかならない。 都市計画・住宅政策・福祉・防災・自治のあらゆる領域が接続しなければ解けない問題であるにもかかわらず、現況の大阪市の対応はあまりに手ぬるい。 だが、だからといって放置すれば、都市は加速度的に危険になる。人口減少よりも早く、建物の老朽化が都市の持続性を奪う。都市インフラの限界が、生活の限界へ直結してしまうのである。 次回の最終回では、これまでの4モデル──都心マンションの静かな老化、郊外戸建の停滞、木造密集地の危機、潜在ストックの未活用──を総合し、大阪市が何を優先し、どこから再生を始めるべきかを提案したい。空き家とは都市の余白ではなく、都市の未来そのものを映す鏡である。大阪市がその鏡にどう向き合うかが、これからの都市の寿命を決める。 <山口 達也> 前の記事を読む 続く ucoの活動をサポートしてください
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December 5, 2025 at 3:01 AM
私の中での祝祭としての盆踊りがある。進化する自治とは、その街をどう運営するかという話ではなく、その街に祝を見つけられる人がどれだけいるかという、ごく静かな問いを立て、それを信じ直すことがスタートライン。
#大阪の暮らし
#都市の文化
#祝とは何か
#日常の中の祝
#祝の再生
#まちを感じる
藤井風「まつり」ミレパ「BON DANCE」
私の中での祝祭としての盆踊り 最近、「祭」という言葉に触れるたびに、胸の奥が少しざわつく。にぎやかで楽しいものではあるのだけれど、そこに“祝うこと”が見当たらない、という違和感のようなものだ。 私は、子どもの頃ひっそりと育んでいた祝の記憶を、まだ手放しきれずにいる。夕暮れの路地に太鼓の音が染み込み、屋台の光が石畳を照らす。 けれど幼い私が動かされていたのは、賑わいそのものではなく、その直前にある静けさだった。母が台所で言う「今年も盆踊りが迎えられたね」。それだけで、家族の健康、地域のこと、そして祖母の不在までもが、ひとつの線となって背中に流れ込んでくる。あの一言こそ祝だったと感じている。誰かに見せるものでも、誰かに伝えるためのものでもなく、自然と人と家族がそっと息を合わせるための“合図”だったのだと思う。 今、私は大阪という都市で暮らしている。大都市であり、どこまでも動き続ける場所。それでも、なぜかこの街の片隅で、あの祝の手触りを思い出すことがある。 藤井風「まつり」ミレパ「BON DANCE」 そんな気持ちがどこかで伝わったのだろうか、アーティスト藤井風さんの「まつり」、常田大希さんが率いるミレニアムパレード(通称ミレパ)の「BON DANCE」(要するに盆踊り)には少なからず衝撃を受けた。まだ聴いたことがない方は、その歌詞を読んでほしい。 大瀧詠一「ナイアガラ音頭」 そういえば、シティポップ全盛時代に聴いた大瀧詠一のナイアガラ・トライアングルに収められている「ナイアガラ音頭」も相当衝撃だったことを思い出した。まさに祝祭性を音にした感じだった。 祝を取り戻すために、何かを復活させる必要はない 祝とは、形式ではなく実感から立ち上がる。だから単に「昔ながらの祭を蘇らせよう」という話ではないし、宗教的な儀式を復興させようというわけでもない。 むしろ逆で、小さな恵みに気づくところから自然と祝は芽生える。 藤井風の「まつり」にはそういう気持ちを歌っている。 この“実感”こそ祝だと思う。特別な準備もいらず、誰に見せる必要もない祝。 あるいは、友人と味噌を仕込んだ日のことも忘れられない。大豆を潰し、麹と混ぜ、樽に押し込む。ただそれだけの作業なのに、半年後の「できてるやん!」という笑いには、言葉にしなくても伝わる祝があると思う。 祝のあるところには、自然と人が集まりやすいし、会話が生まれやすいし、知らない者同士でも微妙に距離が縮まる。 それを無理に“地域コミュニティの再生”などと呼ぶ必要はない。もっと淡い、軽やかなつながりでよい。それでも、そうした祝の時間が積み重なると、人は「ここにいていい」と思える。 その「いていい」という感覚は、実は自治の根っこに静かにつながっている。しかしそれを声高に語ることはしない。これらの”祝”はもっと静かなものだからだ。 祝は“おおらかさ”と親和性が高い 大阪には、細かい境界にとらわれない気風や、「ええやん、それで」と受け入れる柔らかさがある。この気質は、祝を生んでいく上でとても良い土壌になる。 ・誰かが漬物を漬けはじめたら、気軽に混ざっていける・誰かが路地でコーヒーを飲んでいたら、ふらっと隣に座れる・誰かが「今日ええことあってん」と言えば、すぐに場がゆるむ 大阪の街では、こうした“小さな祝”が自然発生しやすかったように思う。 祝とは本来そういうものだった。特別な空間で行われる儀式ではなく、生活の延長でふと立ち上がるもの。 まちの力を信じ直すこと 大阪は大都市ゆえに、希薄さや孤立も生まれやすい。それでも街角には、祝に変わる瞬間が確かにある。 ベンチで缶コーヒーを飲む誰かの深いため息。河川敷で風に吹かれる自転車の並び方。商店街の店主が誰かに手を振る一瞬。 それらをただの風景として流してしまえば、ただの都市。そこに祝を見つけられるなら、大阪はもう少しだけ、柔らかい場所になる。 私は、大阪に流れるその小さな祝の気配を拾い集めたい。大げさな計画ではなく、だれに指示されるものでもなく、日々の実感の中にそっと灯る祝。 それを拾い上げる人が増えれば、この街はゆっくりと、しかし確かに“よい方向”へ滲み出すように変わっていくのではないか。 進化する自治とは、その街をどう運営するかという話ではなく、その街に祝を見つけられる人がどれだけいるかという、ごく静かな問いを立て、それを信じ直すことがスタートラインなのかもしれない。 <山口 達也> ucoの活動をサポートしてください
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December 5, 2025 at 12:07 AM
都市:スピード、農村:スロー、コミュニティ:つながり。この3つを重ね合わせる“デザインの先に進化する自治があるのではないか。
#農村と都市
#コミュニティデザイン
#まちづくりの未来
#地域のズレ
#関係性の再構築
#進化する自治
農村と都市とコミュニティという俯瞰
戦後、長男以外の就労可能な若者が集団就職で、農村のコミュニティからコミュニティ(共同体)に属さない都市部にやってきて、というストーリーから80年。今やコミュニティ論は様々な形で語られているが、その俯瞰を考えてみたい。 本来は一体だった農村/都市/コミュニティ かつての日本社会では、農村=生活の場=仕事の場=コミュニティであった。つまり「空間・暮らし・経済・関係性」がほぼ重なっていた。 しかし現代ではこの重なりが完全にほどけている。 働く場所:都市のオフィス、リモート、サテライト 暮らす場所:ベッドタウン、郊外、農村 所属するコミュニティ:オンライン、趣味、職場、地域の断片的つながり この「重層性のズレ」が、現代の孤立感や、都市問題、農村の過疎、自治の弱体化の根源にあると感じている。 若い世代はこの“分断の風景”を最初から当たり前として生きてきたため、むしろ俯瞰した時に「これ、わざわざ分けて生きる必要あった?」という素朴な問いを持ちやすい。その視点は実際にとても正しいと思う。 都市は加速度、農村は蓄積、コミュニティは連続性 大まかに言えば、三者は違う時間軸の上にある。 ●都市=高速で変わる都市はつねに変化している。ビルが建ち、テナントが入れ替わり、産業トレンドが移り変わる。都市は“加速度”そのものだ。 ●農村=ゆっくりと変わる土地、自然、歴史、風習。変わりにくいものを抱えているのが農村だ。しかしその“ゆっくりさ”が現代では逆に価値になりつつある。 ●コミュニティ=時代に関係なく必要な「連続性」都市にも農村にもコミュニティはある。問題は、それが「地域の線」に沿っているのか、「個人の興味」に沿っているのかが揺らいでいる点だ。 人は、変化の早さと遅さの間で、少しだけ“安定したつながり”を求める。コミュニティはその安定の受け皿である。 3つのズレが生み出した「現代の不安」 俯瞰すると、農村と都市とコミュニティの“三角形”は、うまく閉じていない。 ●都市が抱える不安 流動性が高い つながりが短期的 過集中による負担(住宅、働き方、孤独) ●農村が抱える不安 人が来ない 関係の固定化 維持できないスケール ●コミュニティが抱える不安 役割の形骸化(町会・自治会) オンライン化で「住所に縛られないつながり」が増え、地域のコミュニティが希薄化 しかしオンラインは“最後のセーフティネット”までは担えない どれも別々の問題のように見えるが、実は一つの構造的な問題ではないか。 都市だけを語っても、農村だけを救っても、コミュニティだけを強くしても解決しない。現代の課題は、三者をつなぐ“ハイブリッド空間”をどう設計するかにかかっているとプロットする。 私の実感としての「三者の交点」 ●① 農村的な「スローさ」を都市にも持ち込むことたとえば街の中のコミュニティスペース、公共空間、古民家再生。都市のスピードに“間”をつくる取り組みは、Z世代にとっても居心地が良い。 ●② 都市的な「選択肢の多さ」を農村へ持ち込むこと農村に求められているのは「不便の解消」ではなく、「生き方の選択肢」である。ワーケーション、分散型ライフ、2地域居住。この方向はすでに時代が後押ししている。 ●③ コミュニティを“制度”ではなく“関係性のデザイン”として町会や自治会は、「小さな参加」「ゆるいつながり」「テーマ型コミュニティ」として重ねていくほうが持続しやすい。 今の若い世代は「自治会=古い」というよりも、「内容が自分にフィットしない」という理由が大きい。地域コミュニティやボランティアに関心のある若い世代は確実に一定するいるからだ。フィットすれば活動に参加する可能性は十分ある。つまり、関係性のデザイン次第で参加率は変わる。 三角形を閉じる「設計」が、次の社会づくりの核心 農村・都市・コミュニティを俯瞰すると、見えてくるのは実は単純な構図だ。 都市:スピード 農村:スロー コミュニティ:つながり この3つがばらばらに働いている限り、社会のどこかで必ず「ひずみ」が生まれる。 逆に言うなら、3つを重ね合わせる“デザイン”ができれば、地域社会はまだまだ変われる。進化する自治のヒントがここに転がっている。 <山口 達也> ucoの活動をサポートしてください
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December 4, 2025 at 4:59 AM
都市:スピード、農村:スロー、コミュニティ:つながり。この3つを重ね合わせる“デザインの先に進化する自治があるのではないか。
#農村と都市
#コミュニティデザイン
#まちづくりの未来
#地域のズレ
#関係性の再構築
#進化する自治
農村と都市とコミュニティという俯瞰
戦後、長男以外の就労可能な若者が集団就職で、農村のコミュニティからコミュニティ(共同体)に属さない都市部にやってきて、というストーリーから80年。今やコミュニティ論は様々な形で語られているが、その俯瞰を考えてみたい。 本来は一体だった農村/都市/コミュニティ かつての日本社会では、農村=生活の場=仕事の場=コミュニティであった。つまり「空間・暮らし・経済・関係性」がほぼ重なっていた。 しかし現代ではこの重なりが完全にほどけている。 働く場所:都市のオフィス、リモート、サテライト 暮らす場所:ベッドタウン、郊外、農村 所属するコミュニティ:オンライン、趣味、職場、地域の断片的つながり この「重層性のズレ」が、現代の孤立感や、都市問題、農村の過疎、自治の弱体化の根源にあると感じている。 若い世代はこの“分断の風景”を最初から当たり前として生きてきたため、むしろ俯瞰した時に「これ、わざわざ分けて生きる必要あった?」という素朴な問いを持ちやすい。その視点は実際にとても正しいと思う。 都市は加速度、農村は蓄積、コミュニティは連続性 大まかに言えば、三者は違う時間軸の上にある。 ●都市=高速で変わる都市はつねに変化している。ビルが建ち、テナントが入れ替わり、産業トレンドが移り変わる。都市は“加速度”そのものだ。 ●農村=ゆっくりと変わる土地、自然、歴史、風習。変わりにくいものを抱えているのが農村だ。しかしその“ゆっくりさ”が現代では逆に価値になりつつある。 ●コミュニティ=時代に関係なく必要な「連続性」都市にも農村にもコミュニティはある。問題は、それが「地域の線」に沿っているのか、「個人の興味」に沿っているのかが揺らいでいる点だ。 人は、変化の早さと遅さの間で、少しだけ“安定したつながり”を求める。コミュニティはその安定の受け皿である。 3つのズレが生み出した「現代の不安」 俯瞰すると、農村と都市とコミュニティの“三角形”は、うまく閉じていない。 ●都市が抱える不安 流動性が高い つながりが短期的 過集中による負担(住宅、働き方、孤独) ●農村が抱える不安 人が来ない 関係の固定化 維持できないスケール ●コミュニティが抱える不安 役割の形骸化(町会・自治会) オンライン化で「住所に縛られないつながり」が増え、地域のコミュニティが希薄化 しかしオンラインは“最後のセーフティネット”までは担えない どれも別々の問題のように見えるが、実は一つの構造的な問題ではないか。 都市だけを語っても、農村だけを救っても、コミュニティだけを強くしても解決しない。現代の課題は、三者をつなぐ“ハイブリッド空間”をどう設計するかにかかっているとプロットする。 私の実感としての「三者の交点」 ●① 農村的な「スローさ」を都市にも持ち込むことたとえば街の中のコミュニティスペース、公共空間、古民家再生。都市のスピードに“間”をつくる取り組みは、Z世代にとっても居心地が良い。 ●② 都市的な「選択肢の多さ」を農村へ持ち込むこと農村に求められているのは「不便の解消」ではなく、「生き方の選択肢」である。ワーケーション、分散型ライフ、2地域居住。この方向はすでに時代が後押ししている。 ●③ コミュニティを“制度”ではなく“関係性のデザイン”として町会や自治会は、「小さな参加」「ゆるいつながり」「テーマ型コミュニティ」として重ねていくほうが持続しやすい。 今の若い世代は「自治会=古い」というよりも、「内容が自分にフィットしない」という理由が大きい。地域コミュニティやボランティアに関心のある若い世代は確実に一定するいるからだ。フィットすれば活動に参加する可能性は十分ある。つまり、関係性のデザイン次第で参加率は変わる。 三角形を閉じる「設計」が、次の社会づくりの核心 農村・都市・コミュニティを俯瞰すると、見えてくるのは実は単純な構図だ。 都市:スピード 農村:スロー コミュニティ:つながり この3つがばらばらに働いている限り、社会のどこかで必ず「ひずみ」が生まれる。 逆に言うなら、3つを重ね合わせる“デザイン”ができれば、地域社会はまだまだ変われる。進化する自治のヒントがここに転がっている。 <山口 達也> ucoの活動をサポートしてください
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December 4, 2025 at 3:03 AM
防災共助単位は「規模」と「関係」を二重に重ねる必要があるという教訓。数ではなく関係、関係だけではなく規模、その二重の真理を忘れてはならない。
#進化する自治
#防災減災
#vision50
防災における共助の「単位」(後編)
小学校区の衰退、都市構造の変化、デジタル通信の普及は、人口規模の単位だけでは対応できない。清掃活動や子育てサークル、趣味の会などの「小集団」を基盤とするアプローチはますます重要性を増している。
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December 4, 2025 at 12:11 AM
大阪カジノ住民訴訟で揺れる夢洲-7
市民と大阪市、事実からその主張の違いと正当性を見てみよう
#進化する自治
#夢洲カジノ
#市民と市政
#vision50
市民と大阪市、その主張の違いと正当性
大阪カジノ住民訴訟で揺れる夢洲-7 前回まで、夢洲カジノ裁判の全体像を整理してきた。2022年7月に提訴された第1グループの第1事件を皮切りに、第2グループによる第2事件、第5事件、第3グループによる第3事件、第4事件、そして2024年12月に第1グループによる第6事件の提訴まで、夢洲の土地と大阪市の利益供与ともいえる公金支出を巡って、多くの疑惑と違法性が提起されてきた。これまでに市民、大阪市双方の主張が繰り広げられてきたが、2025年9月22日付で大阪市から第1事件並びに第6事件についての反論のまとめともいえる準備書面が提出された。今回は、原告の市民側と被告の大阪市側のそれぞれの主張の違い、反論とする論拠などを見ながら、明らかになっている事実とそれぞれの正当性について考えてみようと試みた。第1事件は、約788憶円という巨額な税金をカジノ用地の土地課題対策費としてカジノ事業者に支払うということを決定したことの違法性を問うている。大阪市がカジノ事業者の行う事業に税金を投入することは、民間事業者への便宜供与であり、また金額が大きすぎる。そうした理由から、 大阪市は、カジノ事業者カジノ用地を賃貸する契約をするな 大阪市は、カジノ用地の土地課題対策の費用*を負担する契約をカジノ事業者とするな 大阪市は、カジノ用地の土地課題対策の費用の支払いを1円もするな という3点を請求したもの。第6事件は、2023年12月から行われた土地改良工事用地の使用賃借契約において、IR事業者が行う工事にもかかわらず、賃借料を無償としていることの違法性を問うたもの。土地改良事業は大阪市の公共工事との体裁だが、実際には大阪IR株式会社が発注する工事だ。ここでも大阪市がカジノ事業者への便宜供与を図っていることから、本来収入となるべき賃料の損害賠償を請求している。 大阪IRに対する令和5年12月4日から1月当たり金2億1073万0589円の割合の損害賠償もしくは不当利得返還請求の履行請求せよ 大阪市長もしくは大阪港湾局長に対する令和5年12月4日から1月当たり金2億1073万0589円の割合の損害賠償請求の履行請求 第1事件、第6事件に対する反論が出てきた 大阪市が出してきた第1事件、第6事件に対する反論は、およそ次のような主張だ。 大阪市は、夢洲の土地課題対策は大阪市港営事業に属し、市長に財務権限があるため、大阪港湾局長に対する訴えは不適法と主張している。しかも、SPC(現MGM大阪株式会社)による土地使用はIR工事と密接不可分で、工期短縮・経費節減など合理的理由がある。だから無償使用も事業施行上やむを得ず、財産条例や地方自治法に違反しないと反論している。また債務負担行為(788億円)は限度額であり全額支払う義務はなく、契約も「重大明白な瑕疵」がない以上は無効とはならず、住民訴訟の差止請求の前提を欠くとして、原告の主張は不当だ、としている。 権限関係・訴訟要件に関する論拠 港営事業の財務権限は、大阪港湾局長ではなく市長にあるため、局長への請求は法には適合しない。 港営事業は地方公営企業法の適用対象なので、原告の主張する地方自治法96条1項6号・237条2項は適用されない。 大阪市は「契約締結権限は局長に委任」としながら、「財務権限は市長にあり局長は被告適格なし」と主張するなど、局長と市長の役割を都合の良いように切り分けている。土地貸付は財産処分行為であり、地方財政法 96条1項6号(重要な契約)に該当し、本来議会議決が必要であるが、そのことには答えていない。 契約および無償使用の適法性 無償使用は土地改良工事をSPC(現MGM大阪株式会社)が一体的に行うための合理的措置である。 工期短縮や経費節減につながり、市にとっても利益がある。 大阪市は「工期短縮」「費用節減」を挙げているが、それが市にとってどれほどの利益になるかの具体的数値は示されていない。大阪市は土地課題対策工事は「IR工事と一体不可分」と言うが、IRカジノ建設のために市が負担すべきでない工程まで市が肩代わりしているという疑念も起こる。788億円規模の土地改良費を負担することからも、第三者から見れば利益供与ではないか。 大阪市が土地課題対策工事を行う必要性 夢洲IR整備は国の認定を得た政策であり、市・府が共同で策定した区域整備計画に基づき、市には土地に関する責任がある。 地下障害物、液状化対策、地盤沈下対策などは市の所有者として当然の責務である。 夢洲IR整備は、政策的なスローガンの結果によるもの。土地課題対策という個別費用が必要とする合理性がない。国の認定とはいえ、私企業によるカジノ事業である。具体的な公益目的やSPC(現MGM大阪株式会社)の便益と市の負担の不均衡が際立つため、公益性があるとはいえない。ゆえに、工事円滑化を理由にした公益性の主張は認められない。 公金788億円支出の適法性 788億円は「限度額」であり、全額支払う義務はない。 土地改良費用は港営事業会計で行われており、一般財源の乱用には当たらない。 IR区域整備の政策目的達成のための必要経費である。 まず前提として、大阪市がIR事業者のリスクを公金で補填している。特に地下障害物撤去や液状化対策など、市の負担範囲が過剰に設定されている。しかも事業条件書や実施協定の記載から、今後市の負担範囲が拡大し、負担額が増大するリスクもある契約となっている。結果的に支出が限度額近くに達する懸念が大きい。以上、原告市民側と被告大阪市側双方の要旨から、大阪市の主張には矛盾する点がいくつかあるように思う。 契約は局長、責任は市長と権限の所在を局長と市長で使い分けている。 無償使用の合理性を裏付ける論拠がない。工期短縮や経費節減などの具体的試算や数値が示されていない。 契約内容からすると大阪市の負担範囲が広く、将来「限度額」が788億円で止まる保証がない。 SPC(現MGM大阪株式会社)との契約条項が市に不利である点については言及を避けている。 さて、裁判所は双方の主張をどのように捉えるだろうか。次回口頭弁論は、2026年2月9日11時から大阪地方裁判所大法廷で行われる。以下は、原告市民側と被告大阪市側の主張を比較表である。 土地の引渡・使用状況(無償使用と期間)
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December 3, 2025 at 3:01 AM
気候変動訴訟は、今後社会的に多方面に影響を及ぼしていくとされている。
新たに始まった「気候正義訴訟」は、日本の気候変動対策に一石を投じる可能性かある。
#進化する自治
#気候危機
#若者気候訴訟
COP30と気候正義訴訟
世界の平均気温1.5℃削減目標を実現できる具体的数値は示されるか? 2025年11月10日から21日の予定で、ブラジル連邦共和国・ベレンで国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が開催される。日本時間ではきょう火曜日の午前から始まっている。2020年以降に国際社会が気候変動対策にどのように取り組むかを規定した国際条約「パリ協定」(COP21)から10年。30回目の締約国会議であり、また、5年おきに見直すとされた気候変動対策で、各国が温室効果ガスの削減目標や途上国支援として拠出する資金額について、どのような提示をするのかが注目されている。消滅の危機と言われて久しいアマゾン熱帯雨林を抱えるブラジルでの開催は、自然環境や生物多様性へまの対応についても注目されることと思われる。パリ協定で、産業革命前と比較して世界の平均気温上昇を、(2℃より十分低く)1.5℃に抑える努力をするという目標に対して、今年は新たに具体的な数値を提出することになってる。今年の2月末までの提出予定となっていたが、提出したのは200カ国のうち1割だったという。日本は期限内に提出。2013年比で2035年度には60%、2040年度には73%を削減する、という新目標を提示したが、専門家からは「1.5℃目標には不十分」と指摘されているようだ。米国がパリ協定から離脱し、今回は官僚さえ出席しないと言われる中、果たしてどのような合意が得られるのか注目したいと思う。 日本で新たに始まった「気候正義訴訟」 できる限り注目が集まるよう、COP30の開催に合わせて「気候正義訴訟」の原告募集が発表されている。これまで世界各国で政府や企業を相手取った「気候変動訴訟」が提起されており、日本でも「シロクマ公害調停」など数件の訴訟が行われ、現在も進行中の訴訟もある。今年の9月に発表された「Global trends in climate change litigation: 2025 snapshot(気候変動訴訟の世界動向: 2025年概況)」によれば、「1986~2024年の間に提起された訴訟件数は2024年末までに世界全体で2967件(米国1899件、その他1068件)に達した」。提訴件数は2015年の120件が6年後の2021年には300件超と急増。2024年の提訴件数は230件弱となっており、増加率が安定しているという。そうした中で新たに提起された「気候正義訴訟」は、どのような論旨で何を訴えているのかを見てみよう。詳細は公式サイトで「気候正義訴訟」ハッシュタグで「#地球を守るためにうったえてみた」とある。「本訴訟は、気候変動対策に消極的な‘国’を相手どり、地球と私たちの暮らしを守るために早急な対策を求めるものです。」と訴訟の意義が大きく表記されている。ここでは、日本政府が温室高ガス削減をはじめとする気候変動対策に対して、積極的でないこと、また石炭火力発電所の新設を認めるといった政策に対する危機意識を促す目的として、国家賠償請求訴訟を行うという。「気候正義」とはどういう意味か。気候正義という言葉は、気候変動対策の1つのスローガンとしてよく使われている「Climate Justice」の直訳。気候の公平性とも訳される。FoE Japanでは以下のように解説している。 FoE Japanでは以下のように解説している。"Climate Justice (気候の公平性)とは、先進国に暮らす人々が化石燃料を大量消費してきたことで引き起こした気候変動への責任を果たし、すべての人々の暮らしと生態系の尊さを重視した取り組みを行う事によって、化石燃料をこれまであまり使ってこなかった途上国の方が被害を被っている不公平さを正していこうという考え方です。" 請求内容として、以下の3点が挙げられている。 国の気候変動対策が不十分であることについて、立法不作為等による責任を追及します。 侵害される権利としては、生命・健康、営業権、平穏生活権(安定気候生活権)などを主張します。 請求額については、原告それぞれの事情にかかわらず、損害の一部として一人当たり1000円とします。 「気候正義訴訟は、斎藤幸平氏(経済思想家)をはじめ、環境学者やジャーナリストなど10名が呼びかけ人となっている。また弁護団の一角には、「シロクマ訴訟」などの日本の気候変動訴訟をけん引してきたともいえる、一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)が加わっている。 世界で提起された気候変動訴訟 先に紹介したように、世界各国では、これまで様々な気候変動訴訟が提起され、その請求が認められてきた事例がある。先の「気候変動訴訟の世界動向: 2025年概況」によれば、訴訟の戦略としては、以下の3つ形態がある。 政府に対する枠組み訴訟や気候考慮の統合に関する訴訟。特に化石燃料プロジェクトに対する訴訟が多い。 汚染者負担訴訟や企業に対する枠組み訴訟。企業の気候への影響を問う動きが強まっている。 移行リスク訴訟や気候ウォッシング訴訟などが新たな訴訟形態としてある。気候関連リスクに対する法的議論が進展している。 気候訴訟はグローバルサウス各国で明らかに急増しており、ブラジル、南アフリカ共和国、インドといった排出量の多い新興国では特に顕著である。憲法上の権利や環境権に絡んだものを中心に、明確な訴訟パターンが見え始めている。世界的に、新たに提起される気候訴訟のうち、主要なものについては非政府組織(NGO)、個人、もしくは両者共同によるものであるが、グローバルサウスにおける訴訟では、政府機関、規制当局、検察当局も非常に重要な役割を果たしている。グローバルサウスでは2024年に提起された訴訟の56%が政府機関によるものだった。と記載されている。 アージェンダ事件(オランダ) 2013年6月提訴。オランダ政府が温室効果ガスの削減目標を1990年比で2020年に20%としていたことに対して、オランダのNGOと886人の市民が25~40%に引き上げることを求めた訴訟。ハーグ地方裁判所、ハーグ高等裁判所がそれぞれ訴えを認め、2019年12月20日オランダ最高裁判所が、2020年の温室効果ガスの排出削減目標を1990年比で25%削減に引き上げるよう国に命じた。この判決では、国の温室効果ガス削減目標が不十分で違法であると認めたこと、削減目標値を具体的に示した点が画期的とされており、その後の世界の気候変動訴訟に大きな影響を与えたとされている。 スイス女性団体の気候訴訟 「KlimaSeniorinnen(気候保護のためのシニア女性の会)」という多くが70歳代以上のシニア女性たちが、2016年にスイス政府に対して提訴した訴訟。スイスで熱波が発生した際、家から出られず、健康被害を受けたと主張し「スイス政府の不十分な気候変動対策は人権侵害である」としたもの。当初スイス国内では退けられたが、2020年に欧州人権裁判所に提訴。2024年4月9日、欧州人権裁判所は、排出削減目標を達成するためのスイスの努力は、極めて不十分だったと市民の主張を認め、スイス政府が「気候変動に関して欧州人権条約上の義務を怠り」、同条約8条の「私生活および家族生活の尊重を受ける権利」に違反するとした。 韓国の10代の若者による気候変動訴訟 韓国が定めた気候危機に対処するための温室効果ガス排出削減目標、2030年に2018年比40%減とした設定は不十分であり、2031年から2049年までの排出量削減計画が策定されていないこと、若者の基本的権利を侵害していることなどを違憲として、2024年8月29日に提訴した訴訟。2024年4月、韓国憲法裁判所は、韓国のカーボンニュートラル枠組法に2031年以降の削減計画が定められていないことは基本的人権の擁護に違反するとして同法を違憲とし、2026年2月28日までに改正するよう命じたもの。これは、アジアでは初めて気候変動訴訟で人権の侵害として勝ち取ったもので、画期的判決と言われている。紹介した事例以外にも数多くの判例がある。 日本における気候変動訴訟 神戸石炭訴訟 参考:神戸石炭訴訟サイトCO2を大量に排出し環境負荷が高い石炭火力発電所設置に対して、神戸市在住の住民が2018年9月14日に提訴した行政訴訟と民事訴訟。行政訴訟は、経済産業大臣が事業者に対して環境影響評価(環境アセスメント)の「確定通知」をしたことが違法というもの。民事訴訟は、神戸製鋼が建設・稼働する石炭火力発電所に対して、人格権・平穏生活権に基づく、建設・稼働・稼働指示の差止(主位的請求)とCO2排出等の段階的差止(予備的請求)をもとめるもの。行政訴訟では、一審の大阪地方裁判所は、2021年3月「地球温暖化による被害は特定の地域の人にだけ生じる問題ではなく、世界全体の問題であり、個人の法的な権利を認めた法律はなく、政策で対応されるべき問題であるとして、原告は裁判を提起する権利がないとして棄却した。控訴審でも同内容で2023年3月に原告敗訴が確定している。民事訴訟では、2023年3月の一審判決では「原告らの生命、身体、健康に「具体的危険」が生じていない」、「被告の排出と原告の被害との間に「相当因果関係」がない」として請求棄却。控訴審では、大阪高等裁判所は神戸地方裁判所の判決をほぼ踏襲し、2025年4月24日に原告の請求を棄却した。国内では神戸以外でも、2019年に仙台、横須賀でも石炭火力発電所差し止め訴訟が提起された。 明日を生きるための若者気候訴訟 参考:明日を生きるための若者気候訴訟サイト日本各地の10代~20代の若者たちが、気候危機に脅かされることのない未来を求め、日本のCO2排出量の約3割を占める主要電力事業者に対し、科学が示す1.5℃目標と整合する水準での排出削減を求め民事訴訟を提起している。2024年8 月6日、中学生を含む北海道から九州までの16 人の若者たちが名古屋地方裁判所に提訴。原告らは、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)などの最新の科学によれば、2020年に生まれた子どもたちは1950年生まれの世代の4~7倍、気候変動の悪影響を受けると予測される。気候変動によって「誰もが、安定した気候のもと健康的に暮らす権利」が侵害されることに対して、政府や企業が十分な気候変動対策をとることを求める、としている。被告は以下の10社で、被告である主要の電力会社は、火力発電所を多く持っており、電力の販売分も含めると、この10社だけで日本のエネルギー起源のCO2排出量の3割を超えている。これらの事業者のCO2の排出量について、気温上昇を1.5℃以内に抑えるという科学的・国際的な目標に合うように削減を義務付けることを求めている。株式会社 JERA、東北電力株式会社、電源開発株式会社(Jパワー)、関西電力株式会社、株式会社神戸製鋼所、九州電力株式会社、中国電力株式会社、北陸電力株式会社、北海道電力株式会社、四国電力株式会社 気候変動訴訟による影響が広がりを見せている 先の「気候変動訴訟の世界動向: 2025年概況」では、訴訟が社会的に多方面に影響を及ぼしているとしている。このことは、今後日本においても気候変動訴訟が政治、司法、社会環境に大きく影響を及ぼすと考えられる。少し未来の戦略を考える上での参考としたい。以下に引用する。 法廷外でも、訴訟は気候に関するガバナンス、政策立案、資金調達の方向性を左右し続けている。特に、権利に基づく訴訟は、国の法的枠組みや政策枠組みに影響を及ぼすうえで、ますます大きな役割を果たすようになっている。とはいえ、判決の履行状況は一様でなく、裁判所の命令に対して異議が申し立てられることも度々ある。気候訴訟は立法にも影響を及ぼしている。気候変動責任に関する法律の出現は、その顕著な例である。米国では、ニューヨーク州とバーモント州で気候スーパーファンド法が採択されたが、これは、気候変動への適応や気候変動による損失や被害の補償に要する費用を化石燃料会社から回収しようとするものである。しかし、新たなトランプ・バンス政権の下、これらの法律は現在、異議を申し立てられている。カリフォルニア州で提案された類似の法案は、個人や保険会社が気候変動による損失を化石燃料会社から直接回収するために訴えを起こす私的訴権を認めようとするものだったが、2025年4月、州議会上院の司法委員会で否決され、こうした法律の制定に立ちはだかる政治の障壁が浮き彫りになった。一方、フィリピンやオーストラリアなどでは、訴訟がきっかけとなって、注意義務、権利の保護、企業のデューデリジェンス(適切な注意義務)を強化する立法措置の提案につながった。最後に、気候訴訟は、特に企業や金融機関にとって、重要な財務リスクとみなされるようになっている。ほとんどの金融機関は、訴訟をESGリスク枠組みに組み入れ始めたばかりの段階にあるが、規制の圧力は高まり続けている。さらに、新たな石油・ガス開発の承認など、広く注目を集めたほんの一握りの訴訟がすでに戦略的意思決定に影響を及ぼしていることを示す証拠もある。 ucoの活動をサポートしてください
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December 2, 2025 at 11:45 PM
「新田開発と水路に見る江戸時代の大東市のすがた」を学ぶ
舟運と水利、新田で繰り広げられたくらしが偲ばれる
#進化する自治
#北河内
#平野屋新田会所跡
#寝屋川流域
#まちづくり
江戸時代、広大な新田で栄えた北河内の面影
江戸時代、大坂の東部で広大な新田開発が行われた。開発を行ったのは、東本願寺難波別院や大阪の商人たち。いまは広大だった新田の姿はないが、新田開発の歴史の面影を学ぶまちあるきに参加した。大東市は、大阪市の北東に隣接し大阪府下では「北河内」という地域にある。総人口114,887人、京都から和歌山に連なる東高野街道や、大阪から奈良に至る古堤街道など、中世から近世の交通の要衝でもあり、平安時代より続く多くの歴史を抱えている。このまちあるきは「寝屋川・恩智川流域環境フォーラム」という寝屋川・恩智川流域を活動拠点としている団体で、流域にある歴史スポットや、河川にまつわるくらしや防災などに焦点を当てたまちあるきを行っている。今回は平野屋新田会所跡を中心に「新田開発と水路に見る江戸時代の大東市のすがた」を学ぶというツアーだ。 江戸中期に生まれた広大な新田は北河内の風景が変わる 年配の方には大東市というより、野崎詣りで有名な野崎観音のある町、という方がピンとくるかもしれない。戦国時代、その野崎観音のある飯森山のふもとに深野池(ふこのいけ)という広大な池があった。当時この一帯を三好長慶が治めており、この深野池には隠れキリシタンにまつわる物語もあるのだが、今回は新田の話。江戸の中期・1704年(宝永元年)、たびたび氾濫を起こし甚大な被害をもたらしていた大和川の流れを人工的に変える大工事を幕府が始めた。それまでの南から北への流れを西へと付け替え大阪湾まで流すというもの。この付け替えにより、河内一帯にあった深野池や新開池などが干し上がったことをきっかけに、大規模な新田開発が行われた。深野池の跡地には、甲子園球場約85個分とも言われる新田が生まれた。新田開発には、東本願寺難波別院や大坂の商人などが関わっており、新田の所有や管理も大阪の商人たちで行われていた。新田は5つのエリアに分かれていて、深野南新田(平野屋・谷川・南新田地区)と河内屋南新田(東大阪市元町地区)は大坂の両替商・平野屋又右衛門の所有地となり、新田の管理・運営するために平野屋新田会所が設置された。 戦国時代の深野池の絵図(寝屋川・恩智川流域環境フォーラムの画像による) 北河内で開発された新田(寝屋川・恩智川流域環境フォーラムの画像による) 今回のツアーでは、この新田会所跡を中心に、当時使われていた民具や宝物、田んぼに水を引いたり荷を運ぶための水路や井路(いじ・農業用水などを供給するための人工的な水路)、また今も現存する水の流れを調整する樋などを現地を訪ね歩く予定。平野屋新田会所は歴史上重要な施設だったが、宅地開発のためにすでに解体されたが、大東市は公有地部分を市史跡に指定し、調査も行われている。発掘調査を行っている大東市生涯学習課の佐々木拓哉さんを講師に、また平野屋新田会所市民サポーター会議の林田惠子さんに案内していただいた。 農具の一大生産地だった北河内を今に伝える収蔵品 JR学研都市線の野崎駅近くにある「歴史民俗資料館」からスタート。佐々木拓哉さんから平野屋新田会所について説明を受け、会所内に祀られていた坐摩神社に残されていた宝物の、「二十四孝」( 中国古来の親孝行をした24人)のひとつ唐夫人絵馬や地車の宮入りの様子を描いた絵馬などの実物を見せていただいた。その後、一般には立ち入れない収蔵庫で、消火道具の龍吐水(りゅうとすい)や踏車(ふみぐるま)といった会所で使われていた民具や農具を見せていただいた。当時の北河内は農具の一大生産地で、「河内」の刻印がされた木造民具・農具は各地で見つかっているそうだ。 消火道具の龍吐水(りゅうとすい) 収蔵民具の一つ、踏車について説明される佐々木拓哉さん 踏車に記された刻印。河内、諸福、大仁とあり、いまの大東市諸福にあった製造者と思われる 舟運と水利、新田で繰り広げられたくらしが偲ばれる 資料館を後にして、まちあるきの出発。市民サポーター会議の林田惠子さんの案内で、まず野崎駅近くにある観音浜跡に立ち寄った。江戸時代から昭和初期までこの一帯の移動手段は水路だった。特に江戸時代、野崎詣りが大阪の観光地として発達したころは、八軒家浜から屋形船で寝屋川を遡り舟を渡りついで観音浜で降り、ここから慈眼寺までお参りしたという。今回は当時の川や水路、そして井路の跡やその面影をイメージしながら新田像やまちの風景を追っていった。観音浜から一路西へ、現在の谷川中学校の西側で現存する「谷川樋」に向かう。大東市には、石造りの樋が現存するという。今回3つの樋を見ていくのだが、3つそれぞれ特徴が異なっており、その水路のあり方や使い方によって形状も違っている。続いて「かみなり樋門」を訪ねる。この樋門、水路に水をためる機能を果たしていて、ふだんは水位が高いが、舟を通すときは水位を下げて舟が通れるようにする調整も行っていたとのこと。この付近は雷がよく落ちることからこの名がついたらしい。最後は、「どんばの伏越樋(どんばのふせこしひ)」、平野屋新田会所の北東側、鍋田川の下川に作られた樋門。水利権の関係から、新田に隣接する鍋田川から直接水を引くことができなかったため、別の川から井路を引きこの樋を通して「四間井路」へと水を通しいた。四間というから、およそ7.2mの大きな井路が会所脇を流すようにしていた。これは現在の銭屋川だという。この「どんば」という名は、この樋の近くに正月飾りやお札を燃やす新年の行事「とんど」を行うところがあったことから「とんど」と呼ばれていたものがなまったらしい。それにしても、当時の水利についてはかくも厳しかったことが伺える。広大な新田ともなれば多くの水が必要だったこともあり、地元民にとっては防衛せざるを得なかったのかもしれない。 かみなり樋門 解説される林田さんと参加者 かみなり樋門 いよいよ、平野屋新田会所跡に到着。会所の西側を銭屋川が流れ、船着き場を備えた土蔵が立っていた、土蔵跡を中心に林田さんに解説していただいた。千石蔵と呼ばれる米を貯蔵する土蔵の土台跡で、東西棟行約22m、南北梁間約6mの巨大な土蔵が立っていた。この一角は会所全体のほんの一部と考えると、当時非常に栄えていただろうと思われる。ただ、会所の運営は困難でもあったようで、およそ100年間の間に3回所有者が変わっていっており、1823年(文政7年)に銭屋(高松)長左衛門が所有者となり、昭和の農地改革まで高松家が運営していた。 坐摩神社は、もともとは会所の守り神として大阪の坐摩(イカスリ)神社から勧進して建てられたものだったという。そのため会所の一角にあった。銭屋が新田を引き継いで以降、地域に開放され、近隣の氏神として祀られるようになったという。 平野屋新田会所跡 千石蔵の基礎(画像提供原田光晴氏) 坐摩神社前で解説される林田さんと参加者 大東市と大阪市は寝屋川で結ばれており、水運、舟運が主流だった時代には、強い結びつきがあった土地柄。経済や文化の繁栄は、河川の流域に沿って生まれ、発展してきたという歴史がある。農村やまちとの連関や新田の開発や運営にもみられるように、大坂の商人が近隣の農地にかかわり、観光地にもなっていった。鉄道や自動車が主流である現代ではあるが、積み重なってきた歴史をもって、いま一度新しい関係性が築ければ良いな、と思う。 ucoの活動をサポートしてください
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December 2, 2025 at 3:01 AM
提案・選定型と提案・共創型 県民との対話を通じた予算づくり-1
今回紹介する「県民参加型予算」はその具体的な取り組みとして導入された制度だ。キーワードは「対話」と「共創」だ。
#進化する自治
#市民参加型予算
#市民と市政
#vision50
行政の予算編成への市民参加で「公共」はどう変わる?-5
提案・選定型と提案・共創型 県民との対話を通じた予算づくり-1 県民との対話を通じて県予算を共に創り上げる ucoでは、昨年2024年に市民が行政の施策に関与するアプローチを検討するuco講座「進化する自治を構想する」の1つとして、「市民参加型予算から見る市民自治」を実施した。その際に、国内でこれまで紹介した海外の事例と同じようなスタイルで実施している自治体を調査した。長野県では、2022年(令和4)に県民参加型予算を試行的に導入している。※取材は2023年から2024年にかけて行ったもので、「長野県 県民参加型予算」令和5年度の事業内容である長野県企画振興部 広報・共創推進課 対話・共創推進係宮本武彰さんにインタビューに応えていただいた。 長野県・阿部守一知事(現在4期目)が2022年に4期目を目指す際、重点的に取り組むべきと考える政策を「公約」として取りまとめた書面の中に、「県民参加型予算を試行するなど、県民の皆様の声を県政に直接的に反映する方法を検討してまいります。」の一文が記されている。この公約の中で、阿部守一知事は次の3点を「知事として取り組む重点政策」として挙げている。1 持続可能で安定した「確かな暮らし」を守り抜く2 経済が発展し、人間らしい生活が営まれる「ゆたかな社会」を創造する3 県行政を県民に信頼され共創する組織として進化させる 3の「県行政を県民に信頼され共創する組織として進化させる 」の項目の一つとして「県民の皆様との対話と共創の拡大」という文言がある。今回紹介する「県民参加型予算」はその具体的な取り組みとして導入された制度だ。長野県の制度の特徴として、「提案・選定型」と「提案・共創型」2つのスキームが考案されている。キーワードは「対話」と「共創」だ。導入にあたってのポイントは次のことだという。知事公約を踏まえ、「対話と共創」による県政の推進にあたっての具体的な手法の一つとして、県民等の新たな発想や問題意識を取り入れ、県予算を共に創り上げるため制度を導入。対話と共創の手法を多角的に検討するため、選定型と共創型の2つのスキームを試行的に実施。 提案・選定型 県民参加型予算 提案・選定型は、実施する地域振興局において、地域の住民の方にとって関心の高いテーマや、具体的な事業を提案しやすいテーマとなるよう意識しながら、地域の強みや特性も踏まえて設定し、テーマに沿った提案をしてもらう形をとっている。 ガイドブックには、「行政がこんなことに取り組んでくれたらいいな」という思いを、事業としてご提案ください。長野県のより良い未来づくりに皆さまのアイデアを活かします!」とあるように、できるだけ敷居を低く、地域の実情をよく知っている地元の人から、広く提案ができるようなしくみづくりをしている。長野県下には、6つの地域振興局がある。 佐久地域振興局 上田地域振興局 上伊那地域振興局 木曽地域振興局 北アルプス地域振興局 北信地域振興局 それぞれの振興局がテーマを設定しており、令和5年度は以下のテーマで募集している。 募集事業の要件は3点 募集テーマに該当するもの 1事業につき概ね1,000万円以下となるもの 原則として単年度で完了するもの 事例として、令和5年度に予算化・実施した4事業が紹介されている。令和4年募集の実績としては提案数は23件、その中から4つの事業が実施に至っている。 諏訪地域振興局 募集テーマ “諏訪の湖には魚多し”復活プロジェクト(昭和40年代の湖内環境の復活)について 事業名 取り戻そう!豊かだった諏訪の湖 ~諏訪湖魚介類生息環境修復事業~ 事業概要 諏訪湖沿岸域で水生植物帯を試行的に造成 予算額 9,982千円 南信州地域振興局 募集テーマ リニア中央新幹線長野県駅(仮称)が設置される南信州の認知度向上について 事業名① 南信州のふしぎ発見! 日本一コンテンツ普及・開発プロジェクト 事業概要① 地域の目線によるPR要素の掘り起こしを実施 予算額① 6,486千円 事業名② 南信州地域の環境や風土を活かしたウリニア新時代を見据えた、「南信州メディカルバレー(仮称)構想元年」 事業概要② 南信州地域の環境や風土を活かしたウェルビーイングをテーマとして、研究者や民間企業等から募集した提案の調査研究、情報発信 予算額② 4,501千円 長野地域振興局 募集テーマ 「果樹産地ながの」を支える「働き手」の確保について 事業名 果樹産地と果樹の支え手“win-win”共創モデル事業 事業概要 果樹作業への参画を促進する動画作成等 予算額 2,410千円 各地域の県民が、提案された事業について、県民の意見が反映できるよう、事業選定には県民も参加できるような手法をとっている。応募できる提案者資格も 提案日時点で県内に住所を有する方 提案日時点で県内に本社、支店等を有する団体、NPO、企業等 いずれかに該当すれば、原則だれでも提案ができるようになっている。また、幅広い層からも提案いただけるよう、提案者に年齢要件は設けず、除外者も県職員など限定的に設定したという。提案から、事業実施までのステップは下図の通り。審査にあたっては、県民の方にも参加してもらえるよう一般募集をしている。審査員の応募条件も以下の2点いずれかとしている。 審査日時点で提案事業を募集する地域振興局の管轄区域内に住所を有する 者 審査日時点で提案事業を募集する地域振興局の管轄区域内へ通勤・通学し ている者 今回は、長野県「県民参加型予算」(提案・選定型)についてそのしくみと狙いについて確認した。次回は、(提案・共創型)の仕組みや工夫について見ていこうと思う。 前の記事を読む 続きを読む ucoの活動をサポートしてください
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December 2, 2025 at 12:18 AM
石巻「巻組」の空き家へのしくみ化

これまで大阪市の空き家の取り組みを考えてきたが、今回は、講演会で出会った「巻組」についてレポートする。 株式会社巻組 代表取締役 渡邊享子氏 講演 空き家問題に取り組む自治体や民間組織を多く見てきたが、石巻市の「巻組」はそのいずれとも異なる次元で活動している組織であった。表面的には“古民家再生”や“まちづくりプレイヤー支援”と捉えられがちだが、巻組の本質はそこではない。彼らは空き家を単なるストックとして扱うのではなく、地域の変化を生成する“媒介装置”として扱い、その装置を継続的に運用するためのシステムを構築している点にこそ独自性がある。…
石巻「巻組」の空き家へのしくみ化
これまで大阪市の空き家の取り組みを考えてきたが、今回は、講演会で出会った「巻組」についてレポートする。 株式会社巻組 代表取締役 渡邊享子氏 講演 空き家問題に取り組む自治体や民間組織を多く見てきたが、石巻市の「巻組」はそのいずれとも異なる次元で活動している組織であった。表面的には“古民家再生”や“まちづくりプレイヤー支援”と捉えられがちだが、巻組の本質はそこではない。彼らは空き家を単なるストックとして扱うのではなく、地域の変化を生成する“媒介装置”として扱い、その装置を継続的に運用するためのシステムを構築している点にこそ独自性がある。 巻組ホームページから引用 本稿では、その巻組が実装しているシステムの特性と、他地域への示唆について記述する。 「直す」ではなく「使われ方を設計」という根本思想 巻組の最も明確な特徴は、空き家活用の主軸を建物の修繕ではなく利用プロセスの設計に置いている点である。 多くの空き家事業は、行政補助金を活用しながら建物の物理的改修に重点を置く。しかし巻組は「過剰に手を加えない」という判断を一貫して行う。この判断は、単に節約のためではなく、建物を“余白のある状態”に維持することで、住まい手の活動が最大化されるという思想から来ている。 古さの残存は、巻組にとって欠点ではなく、利用者の創造性を刺激する資源である。つまり巻組がつくっているのは“綺麗な空間”ではなく、“使い込む過程を許容する場”である。そしてこの発想こそ、後述するシステムの根幹をなす。 住み手の行動への対応「余白設計」のシステム化 巻組の空き家には「未完のまま貸す」という特徴がある。これは単なる放置ではなく、利用者が自ら用途をつくり、更新し続けるための設計思想である。 この仕組みを支えるのが、巻組が構築している“行動支援システム”である。 (1) 利用者の妄想を引き出すヒアリング 巻組は入居希望者に対し、契約前の段階から丁寧な対話を行う。「どのように暮らしたいのか」「何をここで実現したいのか」という核心部分を抽出し、それを物件の状態に重ね合わせて評価する。 (2) 行動を阻害しないDIY可の設計 軽微な改修は入居者に任せることで、建物の価値を上げる主体を住み手側に移す。さらに巻組は地域の職人やDIY経験者と緩やかにつないでおり、“自力でできることを増やす”学習の仕組みまで内包している。 (3) 利用者同士の横のつながり 巻組の空き家を借りることは、単なる賃貸契約に留まらない。入居者同士の情報交換が自然発生する導線が設計されており、これが「小商い」「地域活動」「移住定着」などの二次効果を生む。 この一連の仕組みは、いわば“利用者が自分の暮らしを設計し直すためのシステム”であり、巻組はその運用者という位置づけである。 「建物」ではなく「関係の回路」の設計 巻組が運用しているのは、不動産業のようでいて、実は都市型コミュニティの循環システムに近い。 空き家事業の多くは、物件の改修と貸し出しで完結する。しかし巻組は、物件が使われ始めた後に生まれる“人の流れ”に最も価値を置いている。 (1) 地域住民との自然な関与 物件を媒介に、地域住民・移住者・新規事業者がゆるやかにつながる。この接点づくりこそ巻組の重要な成果である。 (2) 地域内ネットワークの機能化 巻組は職人、若手経営者、アーティスト、学生などを一つの緩いネットワークにまとめている。入居者が困った際に、このネットワークが“支援回路”として働く。これは制度ではなく運用知によって成立するシステムであり、簡単には模倣されない。
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December 1, 2025 at 3:01 AM
琵琶湖の富栄養化の問題の際にあれほどあった合成洗剤への反対運動としての石けん運動。今の強い「洗剤」には素朴な疑問が残る。
#進化する自治
#環境
#市民と市政
#vision50
「強い洗剤」への素朴な疑問
琵琶湖での「石けん運動」 かつて滋賀県では、琵琶湖の水質保全をめぐって「リンを含む合成洗剤をやめて、石けんを使う運動=石けん運動」が盛んに行われた時期があった。1970年代から80年代にかけて、家庭排水に含まれる界面活性剤が湖の富栄養化を進め、藻類の異常繁殖や水質悪化を引き起こしていた。琵琶湖の汚染は県民の生活に直結する深刻な問題であり、行政や住民は危機感を共有した。滋賀県では1979年、日本で初めて「琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」を制定し、合成洗剤の使用を制限する方向に舵を切った。この動きは全国的にも注目を集め、環境保護の象徴的な出来事として語り継がれている。(現在も下記のように進行中) 琵琶湖を守る県民の活動、取組|滋賀県ホームページ 当時の運動は単なる「洗剤反対」ではなく、「暮らしのあり方を見直す」という社会的ムーブメントであった。住民たちは手作り石けんを普及させ、学校教育でも水環境の大切さを教えた。家庭の排水一滴一滴が琵琶湖につながっているという実感があった。つまり、消費と環境を切り離さずに考える思想が地域全体に共有されていたのである。 現在に置いても琵琶湖ではこの活動は続いているが、全国的に観て、あの時代の熱心さは失われてしまったように感じる。テレビCMをつければ、「頑固な汚れも一瞬で落ちる」「除菌99.9%」「塩素パワーで真っ白に」といった強力さを競う宣伝ばかりが目に入る。流し台や風呂場、トイレ、衣類、さらには床や壁まで、あらゆる場面で「より強い」「より速い」洗剤が登場している。消費者の利便性や衛生意識の高まりを背景に、洗剤は次々と進化を遂げているかのように見える。 だが、その一方で、環境負荷の問題はどこかに置き去りにされているように感じる。塩素系漂白剤や除菌洗剤の多くには、環境中で分解されにくい化学物質が含まれている。排水として流れ出た後、下水処理場で完全に除去されるとは限らない。処理をすり抜けた成分が河川や湖沼に流入し、微生物や水生生物に影響を与える可能性がある。近年では「マイクロプラスチック」や「PFAS(有機フッ素化合物)」など、新たな環境汚染物質が問題視されているが、これらも同様に「見えない便利さの代償」といえる。 さらに、企業のマーケティング手法にも違和感がある。「環境にやさしい」「エコ」「ナチュラル」といった言葉が氾濫しているが、その多くは本質的な環境負荷低減とは結びついていない。ボトルに緑の葉のデザインを施し、リサイクル素材を一部に使用しただけで「エコ商品」と名乗る。中身の化学成分が従来と大差ない場合でも、見た目の印象で消費者は安心してしまう。こうした“グリーンウォッシュ”は、かえって環境意識の形骸化を招いている。 私たちは何かを見失っていないか 思えば、かつての石けん運動は、生活者自身が「自分の手を汚さずに環境を守ることはできない」という覚悟をもっていた。石けんを手作りするのは手間がかかったが、その行為自体が「水とともに生きる」意識を呼び覚ます営みだった。現代は、あらゆる家事を“効率化”の名のもとに機械と化学に委ねてきた。もちろん利便性を否定するつもりはない。しかし、便利さが「考えない消費」へとつながるなら、私たちは再び同じ過ちを繰り返しているのではないか。 環境負荷の問題は、技術が進めば自動的に解決するものではない。むしろ技術が進歩するほど、私たちは「本当に必要か」を見極める倫理的判断力を持たなければならない。強力な洗剤が当たり前になる社会では、「汚れを落とすこと」が「環境を汚すこと」につながるという根本的な矛盾を見失いがちだ。清潔さの追求が、人間の健康と同時に地球の健康を損ねる可能性を孕んでいることを、私たちはもっと意識すべきである。 自分ごととしての環境問題 滋賀県の条例制定から半世紀近くが過ぎた。琵琶湖は一定の回復を見せたが、依然として富栄養化のリスクは残っている。環境教育の現場でも、かつてのような住民参加型の運動は減り、専門家や行政任せの取り組みが増えている。だが、環境問題の本質は技術や制度だけでなく、「暮らしの思想」にある。日常の選択が環境を形づくるという意識を取り戻さない限り、真の解決は訪れない。 たとえば、洗剤を使わなくても落とせる汚れは多い。重曹やクエン酸など、自然由来の素材を使えば十分きれいになる場面もある。水と布だけで掃除する方法も、やり方次第で衛生的に保てる。何よりも、「汚れがつく前に予防する」暮らし方を工夫すれば、強力な化学洗剤に頼る必要は少なくなる。手間を惜しまず、自然と共にある生活リズムを取り戻すことこそ、かつての運動が私たちに残した最大の遺産ではないだろうか。 「環境にやさしい」という言葉を、本来の意味で取り戻したい。便利さの裏にある環境負荷を見つめ直し、消費者としての選択を自覚的に行う。その一歩一歩が、未来の水を守る礎になる。琵琶湖の教訓は決して過去の話ではない。今この瞬間も、私たちの排水がどこかの川を流れ、海へとつながっている。清潔さを求めることと、地球を汚さないこと──その両立をもう一度、私たちの手で考え直す時が来ているのである。 <山口 達也> ucoの活動をサポートしてください
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December 1, 2025 at 12:17 AM
大阪市郊外の空き家住宅問題はかせない、直せない、売れない、ビジョンもない、行政施策も乏しいという問題に直面している。
#大阪市 #空き家問題g/%E7%A9%BA%E3%81%8D%E5%AE%B6%E5%95%8F%E9%A1%8C" class="hover:underline text-blue-600 dark:text-sky-400 no-card-link">#空き家問題 #都市の老化 #都市政策htag/%E9%83%BD%E5%B8%82%E6%94%BF%E7%AD%96" class="hover:underline text-blue-600 dark:text-sky-400 no-card-link">#都市政策 #まちづくり
#進化する自治
#再生不能ストック
#都市政策
#築古マンション
#vision50
#都市ストック
#マンション管理
#空き家問題
大阪市空き家問題の断層<3>
4つのエリアモデルで考えてみる 大阪市の人口増なのに空き家増という矛盾。都市のエネルギーが「新築供給」と「都心回廊の表層成長」に偏り、既存の住宅ストックが老朽化したまま放置される構造が定着してしまった。 今回も大阪市の空き家問題を4つのエリアモデルを仮想して分類し、個別に掘り下げて論じることを試みるその3回目。 ① 都心部マンション密集エリア② 郊外戸建ストックエリア③ 木造密集旧市街地エリア④ 潜在活用ストックエリア ② 郊外戸建ストックエリアについて論考する。 売れない・貸せない・壊せない―“動かない空き家” 大阪市の空き家問題を語るうえで、都心部の築古マンションと並んで重大なのが、郊外に広がる戸建住宅ストックの停滞である。大阪市は政令指定都市でありながら、昭和の住宅都市としての側面を強く持ち、城東区・東淀川区・住吉区・旭区・鶴見区など、戸建主体の住宅地が広範囲に存在する。これら郊外住宅地は、かつて高度成長期には「新しい生活の場」として大量供給されたが、いまやその多くが老朽化し、世代交代が止まり、空き家へと転じつつある。 その結果、郊外戸建は “売れない・貸せない・壊せない” という三重苦の状態に陥り、都市の中で最も“動かない”ストックとなっている。本稿では、この構造がなぜ大阪で特に深刻なのかを解き明かしたい。 郊外戸建ストックの“厚み”が大阪の特徴 大阪市は全国の政令市と比較しても戸建ストックが多い。「大阪=都心マンション都市」と見られがちだが、実際には長屋・狭小戸建が密集するエリアとともに、戦後に造成された住宅地が市域の広範囲を占めている。都市としてのダイナミズムは都心に集中するものの、生活圏の基礎となる住宅地は、まだ昭和の構造を引きずっている。 令和5年住宅・土地統計調査を見ると、大阪市の戸建空き家は約37,000戸。そのうち 73.0%が「使用目的のない空き家」 と分類されている。これは、ほぼ完全に放置されている空き家、すなわち「動かない住宅」であることを意味する。 一方、長屋や共同住宅は空き家が多くても賃貸化の余地がある。しかし戸建はそうはいかない。所有者が亡くなれば相続、相続がもつれれば未登記化し、未登記になれば売却も困難。貸そうにも改修コストが高くつき、壊そうにも解体費が捻出できない。こうして戸建は都市の奥底で沈殿していく。 大阪市の郊外住宅地は、まさにこの構造的な沈殿を大量に抱えている。 なぜ“売れない”のか――市場から外れる住宅地 大阪の郊外戸建は市場で敬遠されやすい。理由は単純である。 最寄り駅から遠い 狭小敷地で車が入らない 建物の老朽化が激しい 接道条件が悪い 近隣がすでに高齢化し、地域魅力が低下 つまり、中古戸建としてのスペックが弱いのである。 また、私自身の感覚でもあるが、大阪人の多くはモビリティ(移動距離範囲)が小さい。阪急を利用している人は梅田まででほぼすべての用事を済ます。南海や近鉄、京阪電鉄圏の難波、天王寺、京橋等にはなかなか行かない。そのくらい行動範囲が狭い。そのためかちょっと駅から離れると人気のないエリアになってしまう。 さらに関西圏では「マンション志向」が強く、若い世代は郊外戸建よりもアクセスの良い中古マンション・新築タワーを選びやすい。結果として、郊外の戸建は買い手がつかず、取得者がいなければ活用もされないまま空き家化する。 ここで問題なのは、評価額が低すぎて売れない物件であっても、建物の解体費用はほぼ同じだという点である。価値は低いのに、負担だけが重い。こうして所有者は身動きが取れなくなる。 “貸せない”理由――最低限の改修ですら重い負担 戸建の賃貸化は、戸建空き家再生の一つの道である。しかし大阪の郊外戸建では、それも難しい。老朽化が進み、耐震性・設備・水回りなどの更新が必要な物件が多いにもかかわらず、改修に数百万円単位がかかる。貸しても家賃は月6〜8万円程度。投資回収に10年以上かかり、設備更新を考えると採算が取れない。 さらに、設備の老朽化によるトラブルやクレームが生じやすく、貸主側がリスクを嫌って賃貸市場に出さないケースが多い。結果として、戸建は市場から排除され、静かに時間だけが流れる。 “壊せない”理由――解体コストと心理的コスト 大阪市内の戸建解体は80〜150万円が一般的である。狭小地や密集地ではもっと高額になるうえ、近隣との距離が近く、重機が入りにくいため、工期も伸びる。 所有者の多くは高齢で、 手続きが煩雑 予算がない 子ども世代が遠方 という状況が重なり、解体の意思決定が先送りされる。また、実家を壊す心理的抵抗も大きい。こうした“解体のハードル”が積み重なり、郊外戸建は空き家化し、その状態が次世代に持ち越されていく。 支援が届かない大阪市の問題 大阪市には空き家解体補助や改修補助の制度があるが、利用件数は驚くほど少ない。理由は明確である。 申請条件が厳しい 補助額が低い(上限50〜100万円程度) 平成期以前のストック量に対して制度規模が小さすぎる 所有者の高齢化に対して、支援窓口の伴走力が弱い
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November 28, 2025 at 3:01 AM
気候変動問題に関心がある一方、情報不足を指摘する声は多い。政府や自治体がどれほどの危機感をもっているか。その度合いが今回の調査結果に表われてはいないだろうか。
#進化する自治
#気候危機
#防災減災
#vision50
気候変動問題やその影響についての関心は高いが、対策が低調の理由
10月31日、内閣府が2025年9月に実施した「気候変動に関する世論調査」の速報値が公表された。内閣府「気候変動に関する世論調査」「気候変動に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とする。」ための調査で、定期的に行われており前回は令和5年7月。調査対象が「全国18歳以上の日本国籍を有する者3,000人」と広い割には回収数は1,766人と少ない。速報値だから仕方ないが、年齢など属性別による集計値が出ていないので、それぞれの調査結果による傾向までは確認できない。「本調査は速報であり、属性別の結果やクロス集計表については確報段階で公表する。」とされているので確定版を待ちたい。調査の分野は次の5点 1 気候変動問題について 2 脱炭素社会について 3 気候変動影響について 4 気候変動適応について 5 熱中症予防について各分野の調査項目の回答で気になる点がいくつかあったので紹介したい。 9割が気候変動問題に関心がある一方、情報不足を指摘する声は多い。 気候変動が引き起こす問題に関心があるかという問いに91.7%が関心があるとしてる。前回の89.4%から約3ポイント強増加している。国際会議や異常気象の報道が増加していることも影響していると思われる。そして気候変動によって大雨による水害や農作物への被害など、様ざまな影響が出ることについても86.2%が知っていたと答えている。 内閣府「気候変動に関する世論調査」 この後、気候変動適応を実践する上で課題についての質問があるのだが、上位3つの内容が興味深い。気候変動適応気候変動は私たちの生活にも影響を与えています。その影響に対処し、被害を防止・軽減する取組を「気候変動対応」といいます。あなたが、ご自身で気候変動適応を実践するにあたり、どのような課題があると思いますか。・経済的なコストがかかること 63.4%・どのような基準で選択し取り組めばよいか情報不足 50.0%・気候変動適応としてどれだけ効果があるかわからない 41.6% 内閣府「気候変動に関する世論調査」 前回の調査でもこの3項目が上位を占めている。経済的コストがかかることについては前回より16ポイント上がっているのは物価高の影響も大きいだろう。しかしここで重要なことは、気候変動問題に対処するための「正確な情報」が不足していることではないか。明確に情報が不足していることを選択しているだけでなく、「気候変動適応としてどれだけ効果があるかわからない」という選択肢を合わせれば、相当数の人が気候変動問題にたいしてどのような対応があるのか、どのような効果があるのかといった情報の正確性に疑問があるのではないかと思われる。インターネットで検索すれば、何百件もの情報はリストアップされるが、的確で自分の生活にとって効果的な対策がわからないということだと思う。ましてや、その対策のために何らかの商品購入が必要となれば、ほんとうに効果があるかどうか買ってみなければわからないのであれば、「コスト対効果」を考慮し買い控えることは容易に想像できる。また別の質問に、「気候変動適応に関して政府、地方公共団体に期待す取組み」がある。ここでは、日常生活に直接影響する項目に多くの要望が集まってはいるのだが、「気候変動影響や気候変動適応の取組みの情報提供」が42.6%となっている。質問票ではこの回答項目は最後の方にあるのだが、多くの回答が集中していることが伺える。 内閣府「気候変動に関する世論調査」 企業や自治体に対する気候変動に関する調査が必要ではないか 今回の調査は、あくまでも国民の意識調査。しかしこの質問項目や回答内容からは、気候変動に対する危機感はわからない。気候変動に起因する様ざまな影響については、今年の異常な暑さや長かった夏など、人は肌感覚で危機感を持ったと思っている。実生活への影響をはじめ、命に係わる熱中症への対策などは、多くの人が行っているだろう。しかし一方で、政府や自治体、そして企業などはどれほど危機感を持って対応しているのかが窺い知れない。温室効果ガスの大量排出元であり、エネルギー消費でも、政府機関や自治体施設、企業活動が大きく影響していることは明らかだが、再生可能エネルギーへの転換や産業構造の転換などにどれほどの危機感を持って対応しているだろうか。ucoでは自治体新電力についての取材を続けているが、具体的に取り組んでいる自治体はまだまた少ない。特に都市部になればなるほどその対応は遅々として進んでいない。政府をはじめどの自治体も脱炭素社会への転換や、カーボンニュートラルを目指す、といったメッセージは掲げてはいるのだが、具体的な対応や、実施ている効果・検証を明らかにしている自治体は少ない。政府や自治体がどれほどの危機感をもって市民に呼び掛けているのか、その度合いが今回の調査結果に表われてはいないだろうか。気候変動適応という対処方法ではなく、気候変動の流れを転換しなければならないこと、そして自ら行動することを市民、国民に向けて伝えることこそ必要だと提起しておく。「「身を切る改革」などといって議員定数を減らすことを訴えるのではなく、政府や自治体、企業は身を挺して気候変動に立ち向かう姿を見せてほしい。
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November 28, 2025 at 2:26 AM
神話にまつわる伝承を現代に再現する「にんやか田邊」の人々
過去の歴史を掘り起こし、目に見える形でにする
こうした活動にこそ、もっと光が当てられれば良いのに
#進化する自治
#まちおこし
#まちづくり
その昔、舎人が神馬を牽いて通った御馬道を訪ねる
神話にまつわる伝承を現代に再現する「にんやか田邊」の人々 古代難波の宮からその名が残る田邊郷に、神馬(しんめ)が往来したと伝わる御馬道(おんまみち)があった。田邊郷は、およそ現在の東住吉区と阿倍野区の一部(桃ヶ池町、長池町)を含むエリアで、大阪市内でも長い歴史を残す地域だ。この田邊郷の歴史を紐解き、町おこしの一環としてイベントや伝統野菜の育成など、様ざまな活動をされている「にんやか田邊」。大阪の伝統野菜として「田辺大根」はよく知られているが、にんやか田辺はこの田辺大根の育成を行ったり、田辺大根品評会といったPRイベントを行ってもいる。そうした催しの一つとして行われている「神馬の道再現ウォーク」に参加した。初詣や七五三などで多くの人が参拝する住吉大社。田邊郷の西に位置し、摂津国一宮であり、全国の住吉神社の総本社でもある日本を代表する神社だ。田邊郷に伝わる神馬は、この住吉大社の白馬にまつわる物語の主人公である。神馬とは、神様が人間の世界へやって来るときに乗る馬とされており、神馬を見ると邪気を祓い、その年の無病息災につながると伝えられている。古来より生きた馬を奉納することが行われており、現在も全国で14社の神社に神馬がいると聞く。中でも住吉大社の神馬はたてがみも尻尾も白毛で、赤い目を持つ希少な馬とのこと。時は神功皇后の世まで遡る。第14代天皇・仲哀天皇の皇后で、仲哀天皇が崩御ののち息子の応神天皇が即位するまで摂政として約70年間統治したとされる神話の皇后。神功皇后が朝鮮出征(三韓征伐)の折、現地で見つけた素晴らしい白馬を連れ帰り、住吉大社の神馬とした。ある日行方不明になり、探したところ田邊にいるところを発見された。その時、「この神馬は田邊の地が田邊を気に入っているようだ」とらえられ、以来田邊の人々が馬の世話を仰せつかったと伝わる。現在残る神馬塚の由緒書きによると、舎人(とねり)*の橘氏が代々の神馬の養育をしたとされている。神馬の御厩や神馬塚は北と南にそれぞれ2か所あったが、現在は北の神馬塚のみが残されている。神馬塚は、神馬がなくなった際に埋葬し祀った場所で、歴代の神馬が祀られているいう。その後、住吉大社の神馬は田邊で飼育され、舎人の橘氏が朝夕田邊から住吉大社に通うといったことが日常行われるようになった。この伝承に由来する行事は戦前まで行われており、毎朝田邊から住吉大社に行き、夕刻に田邊に戻った。北の厩舎は昭和30年代まで残されていたという。この神馬の通った道を御馬道と言われ、現在「神馬の道再現ウォーク」として再現されるに至っている。 舎人 皇族や貴族に仕え、警備や雑用などに従事していた下級官吏 30名ほどの参加者とともに御馬道を行く 「神馬の道再現ウォーク」は毎年11月23日、新嘗祭にあわせて実施されている。神馬の道は、現在の山坂1丁目にある法楽寺から住吉大社まで約4.8kmの道のり。法楽寺は、地域では田辺不動尊と呼ばれる田邊の地で親しみ深い真言宗の古刹。平安時代末期の武将、平重盛(1138~1179年)が建立したとされる。 この法楽寺に集合し、にんやか田邊の松原恵子会長から神馬の道ウォークにまつわる伝説を聞いたのちに出発する。つかわされる神馬は、本物に代わり神馬に見立てた木馬の御輿。 ◀にんやか田邊の松原恵子会長(左)と吉村直樹事務局長(右) 出典:にんやか田邊パンフレットより 神馬の道ウォークは、2009年(平成21)に第1回が行われ、今年で17年目。コロナ禍のお休みをまたいで第15回目の開催だ。この日は、代々神馬の飼育をされていた橘氏の末裔の方も来ておられ、6歳前後のころ、親に連れられ住吉大社から田辺までの道のりを歩いた記憶を語られていた。実際の御馬道とは少々異なるが、北田辺にある「神馬塚」に立ち寄り由来を聞く。 神馬塚 田邊郷の氏神である山阪神社に立ち寄りお祓いを受ける。山阪神社は田辺神社ともいわれ、渡来系氏族の田辺氏が自らの祖先神を祀ったとされている。地名の田辺もこの田辺氏に由来するとされている。住吉大社からも大変重視されており、古くより特別な関係にあったとされている。 あびこ筋を西に渡り約2時間、住吉大社に到着。神楽殿にて奉納を伝えお祓いを受ける。 住吉大社神楽殿に神馬を奉納 禰宜の衣装をまとった「にんやか田邊」事務局長の吉村直樹氏によれば、田邊の歴史にまつわる伝承を現代に再現することで、地域のことを知ってもらい、語り継いでいきたいという思いで始めたとのこと。先に紹介したように、にんやか田邊では田辺大根の栽培やPRイベントはもちろん、第二次世界大戦時に米軍が原爆の模擬爆弾の投下したことなどを伝える活動もされている。田邊郷という古い歴史のある町だからということはもちろんあるだろう。松原会長や吉村事務局長はじめ、田辺で生まれ育ち、暮らしている方が多くかかわっておられることもあろう。されど、過去の歴史を掘り起こし、目に見える形で伝統や伝承を伝えていくことは並々ならぬ努力があることがわかる。これらの催事を毎年、毎年行っていくこと、年輪を積み重ねるような活動にこそ、もっと光が当てられれば良いのにと思う。 ucoの活動をサポートしてください
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November 27, 2025 at 3:00 AM
判決は、大阪市の主張する財産条例第16条は否定しながら、なぜ本会議の議案にも上がっていない財産無償譲渡を「議会の議決があったということができる」と追認するのだろうか。
1審判決の矛盾を明らかにする
#進化する自治
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#市民と市政
#vision50
市民の財産権、教育自治を奪う行政の裏切り-3
判決は、大阪市の主張する財産条例第16条は否定しながら、なぜ本会議の議案にも上がっていない財産無償譲渡を「議会の議決があったということができる」と追認するのだろうか。 1審判決の矛盾を明らかにする
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November 27, 2025 at 12:48 AM